2026年2月3日、「ナーランダストア」と「寺町商店」がひとつになり、オンラインストア「どっこいしょ」として新たにスタートしました。
実は「どっこいしょ」は、仏教に由来するともいわれる言葉です。親しみのある店名の背景には、仏教の智慧と、おもてなしや丁寧な仕事といった、日本人の知恵を届けたいという思いがありました。
なぜ、ふたつの店をひとつにしたのでしょうか。寺町新聞の記者であり「どっこいしょ」のユーザーでもある山田が、ナーランダ出版代表(どっこいしょ店長)の雄興知哲さんを取材。ふたつの店を統合した理由と、商品を通じて伝えたい思いを伺いました。
ふたつの店に共通していた「智慧を届ける」という願い

仏教の智慧と、日本人の文化を世界に届けたい
——ナーランダストアと寺町商店は、それぞれどのようなお店だったのでしょうか?
ナーランダストアは、仏教の智慧を届けるために始めたオンラインのお店ストアです。大愚和尚の書籍や日めくりカレンダーなど、仏教の教えを日常のなかで感じてもらえる商品を扱っていました。
寺町商店は、日本の伝統的な文化、お寺の暮らしをテーマにした品を揃えるお店です。日本人が大切にしてきた伝統や心に触れられるような、暮らしに寄り添う道具を届けたいと考え、ナーランダストアとは別の時期にスタートしました。
——ふたつのお店を統合したのはなぜでしょうか?
きっかけのひとつは、お客さまの声です。それぞれの店で扱う商品が増え、両方のお店で買ってくださる方も多くなりました。そのなかで、「ひとつの場所で購入できるとありがたい」という声を多くいただくようになったのです。
ただ、統合を決めた理由は、それだけではありません。
ナーランダ出版は、「世界に智慧の花束を」という理念で活動しています。仏教の教えを届けることは、私たちの大切な役割です。と同時に、日本人の伝統文化や日常生活のなかにも学ぶべき知恵はたくさんあります。
たとえば、おもてなしの心や丁寧な仕事、物を大切にする「もったいない」という感覚も、日本人が長く受け継いできた知恵だと思います。
仏教の智慧と日本人の知恵は、入り口は違って見えても、どちらも人の心や暮らしを整えるもの。それなら、別々のお店から発信するのではなく、ひとつの場所から一緒に届けたほうが、私たちの願いにも合っているのではないか。そう考えて、ふたつのお店をひとつにしました。
——2月3日の節分にスタートしたことも、意味があるのでしょうか。
私たちは、日本の文化や季節の節目を大切にしています。新しい商品や企画を発表するときも、日本の伝統的な節目や、仏教にちなんだ日を選ぶことが多いです。
節分は、冬から春へと移り変わる節目の日です。新しいお店を始めるのにふさわしいと考え、2月3日にスタートしました。
「どっこいしょ」は、心と体がひとつになる言葉

——店名を「どっこいしょ」にしたのは、なぜでしょうか。
まず、一度聞いたら忘れない名前にしたいと思いました。そして、昔から日本人が使ってきた親しみのある言葉にしようと、スタッフみんなでアイデアを出し合って決めたのが「どっこいしょ」でした。
最初は「なぜ『どっこいしょ』なんですか?」と驚かれることも多かったです。でも、一度聞くと覚えてもらえますし、仏教とのつながりがあると知ると、誰かに話したくなる名前でもあります。最近は少しずつ親しんでいただけるようになったと感じています。
――「どっこいしょ」と仏教には、どのようなつながりがあるのでしょうか。
「どっこいしょ」は、仏教の「六根清浄(ろっこんしょうじょう)」という言葉から変化したともいわれています。
六根とは、「眼・耳・鼻・舌・身・意」のことです。現代でも五感といいますが、仏教ではそこに心(意)を加えた6つを、人が物事を感じ取る感覚器官として捉えています。
人は、見たものや聞いたもの、触れたものに心を動かされ、欲望や執着に悩むことがあります。六根清浄には、そうした6つの感覚を清らかに整えていくという意味があります。
かつて修験者たちが「六根清浄」と唱えながら山を歩き、そのかけ声が時代とともに「どっこいしょ」へと変化していったといわれています。
おもしろいのは、いまの「どっこいしょ」にも通じるものがあることです。重い荷物を持ち上げるとき、私たちは「どっこいしょ」と声を出しますよね。あの瞬間は、過去を悔やんだり、将来を心配したりしていられません。いまこの瞬間に集中していて、心と体がひとつになっている。そんな状態だと思うんです。
現代は情報が多く、頭で考えすぎて、心と体が離れてしまいがちです。だからこそ、「どっこいしょ」という言葉のように、いまこの瞬間に心と体を戻せるものを届けたいと考えています。
商品を通して、大切なことを思い出してもらう
――商品を選び、届けるうえで大切にしていることを教えてください。
便利さや安さも大切ですが、それだけではなく、使う人の心や体を整えるものを扱いたいと考えています。眼・耳・鼻・舌・身・意という6つの感覚にとって心地よく、六根を整えることにつながる商品です。
商品数を増やすことを優先するのではなく、スタッフが日頃からアンテナを張り、地域に受け継がれてきたものや、心身によいと思えるものを探しています。私たちの思いに合うものに出合ったときは、つくり手の方に連絡し、取り扱いについて相談します。
お客さまには、商品を購入して終わりではなく、目にしたり使ったりするたびに、「そうだったな」と大切なことを思い出してもらいたいです。ほんの小さな気づきでも、その積み重ねが人の暮らしや人生をつくっていくと思っています。
――その考えが表れている商品には、どのようなものがありますか。
代表的なもののひとつが、念珠「佛心の輪」です。もともとは佛心会の会員さんのアイデアで、スタートした商品でした。
「佛心の輪」には、身につけることで、離れた場所にいても同じ思いを持つ人とのつながりを感じられるように、という願いが込められています。
心のつながりは目には見えませんが、同じ念珠を身につけることで、そのつながりを目に見える形で感じることができます。そうした声が自然と広がり、いまでも多くの方が手に取ってくださっています。

使っている人のなかには、「古くなってひもが切れてしまったけど、直して使い続けたい」と相談してくださる方もいました。そこまで大切にしてくださっていることに驚き、とてもうれしく思いました。
和ろうそくも、私たちの考えを表す商品のひとつです。日本の伝統的な技術で作られたもので、お寺でも使われてきました。
ろうそくの火を静かに見つめていると、心が落ち着きますよね。日本の伝統技術を残していきたいという思いと、火を見つめながら心を整える時間を持ってほしいという思いを込めています。もちろん、法要やお墓参りなどでも使用できます。

――私も「どっこいしょ」でTシャツを購入したことがあります。仏教の教えなどはあまり考えず、実は「かわいい」と思って選びました。
それでいいと思います。私たちもできれば、かっこうのよいもの、かわいいものをつくりたいと思っています。入り口は「かわいい」「着てみたい」で、まったくかまいません。そこから、デザインに込められた教えを知り、「こういう意味があったんだ」と少しずつ深めてもらえたらうれしいです。

最初から仏教について深く知っている必要はありません。仏教だからと身構えず、普段の暮らしのなかで自然に触れてもらいたいと思っています。
仏教や日本の知恵と出会う、最初の接点に
——今後、どのような商品を扱っていくのでしょうか?
今後は、「どっこいしょ」でしか手に入らない本を増やしていきたいと考えています。これまでも大愚和尚の本を多く届けてきましたが、今後は仏教の智慧だけではなく、日本人が大切にしてきた心や、古くから受け継がれてきた教えも本にしていきたいです。
商品についても、6つの感覚を整えるものをさらに充実させたいと思っています。そのひとつとして考えているのが、掃除道具です。
掃除は、実際に体を動かして、自分の身の回りを整える行いです。便利な道具に任せるだけではなく、あえて自分の体を使って掃除をすることで、心も整っていくのではないかと思います。
いまはふきんなどを扱っていますが、今後は、ほうきや雑巾なども加えていきたいですね。お寺の暮らしや供養に関わるものも含め、心と体を整える暮らしの道具を届けていきたいです。

――「どっこいしょ」を、これからどのようなお店にしていきたいですか?
仏教を難しい学問や、自分の生活とは関係のないものだと思ってほしくありません。もっと身近に、普段の暮らしに取り入れられるものとして伝えていきたいです。
仏教に詳しい方だけではなく、たまたま商品を見つけられた方や、日本の伝統的なものを大切にしたいと思っている方にも、気軽に立ち寄ってご利用いただけたらうれしいですね。
「どっこいしょ」が、仏教や日本人の知恵と出会う最初の接点になれたらと思っています。
\どっこいしょオンラインストアはコチラ/
あとがき
年齢とともに、口にすることが増えてきた「どっこいしょ」。今回のお話を聞いて、その言葉が少し愛おしく感じられるようになりました。
思わず「あぁ疲れた。どっこいしょ」と口にしたときに「どっこいしょ」のサイトを覗いてみると、そこには心や体を整えるヒントになる商品との出会いが待っているかもしれません。
(取材・文:山田かよ)



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