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人間関係の悩みは「なくせない」。しかし、「軽くする」ことはできる

2026 7/17
寺町ニュース ピックアップ
2026年7月18日

大愚元勝・新刊『人づき合いを円満に育くむ 6つの方角』より

親子、夫婦、友人、職場の上司と部下、先生と生徒――。

私たちは毎日、誰かとの関わりの中で生きています。

人とのご縁に支えられ、励まされ、救われることがある一方で、その同じ人間関係によって、深く傷つき、悩むこともあります。

「どうして、わかってもらえないのだろう」

「なぜ、あの人とはうまくいかないのだろう」

「もっと違う言い方ができたのではないか」

相手を責めたあとで自分を責め、距離を置けば孤独になり、近づこうとすればまた傷つく。そんな行き場のない思いを抱えたことのない人は、おそらく一人もいないでしょう。

けれども、私たちは学校で、国語や算数、歴史や科学を学んできた一方、人とどのように向き合い、関係を育てればよいのかを、体系的に教わる機会はほとんどありませんでした。

そこで、約二千六百年前にお釈迦さまが説かれた『六方礼経』の智慧を、現代に生きる私たちのために読み解いたのが、大愚元勝和尚の新刊『人づき合いを円満に育くむ 6つの方角』です。

『六方礼経』では、人生を支える人間関係を6つの方角に表します。

東は親子、南は師弟、西は夫婦、北は友人、下は上司と部下、上は宗教者と信者。

それぞれの関係には、一方だけが守るべき決まりではなく、お互いが相手に対して果たすべき役割が示されています。

人間関係を「相性」や「好き嫌い」だけで捉えるのではなく、自分は相手に対して何を果たすべきなのかを見つめ直す。その視点に立つと、こじれていた関係を結び直す道が見えてきます。

今回は、本書の「はじめに」から、その根幹となる一節をご紹介します。


目次

私たちは「生かされている」のではなく、「成り立っている」

四苦八苦が示す通り、人間の苦しみの多くは、人との関わりの中から生まれます。

お釈迦さまの時代から現代まで、約二千六百年のときを経ても、この原則は変わっていません。人間関係はいつの時代も、多くの人が避けて通れない大きな悩みです。

ただ、現代社会は以前の生活環境に比べて、人とのつながりやしがらみから距離を取りやすくなっています。

かつての農村や町内会のような濃いつながりの中では、人間関係に強い結びつきがあり、簡単には離れられませんでした。

ですが、今は都市化の進行や職業選択の自由、プライバシーの尊重、転職やリモートワークの広がりなどによって、自分で環境を選び、負担に感じる関係から離れることも比較的容易になっています。

その一方で、精神的・情報的な負担はむしろ増えているのではないでしょうか。

SNSの投稿が常に目に入り、ブロックしても違うルートから相手の存在が流れ込んでくる。匿名で攻撃される不安におびえ、「いいね」やフォロワー数を通じて他者の評価に心を縛られる。デジタル空間での人間関係の苦しみは、新しい形で増幅しています。

人間関係を「わずらわしい」という理由だけで、完全に断ち切ることはできません。

なぜなら、私たちは「あらゆる関係」の中で成り立つ存在だからです。

お釈迦さまが悟りの中で見通されたのは、

「私という存在は、無数の関係によって成り立っている」

「私たちは、決してひとりだけで存在することはできない」

という真理でした。この真理を、仏教では「縁起」と呼びます。

「縁」は関係やつながりを、「起」は生じることを意味します。

仏教における縁起とは、あらゆるものは単独で存在するのではなく、ほかのものとの関わりによって成り立っている、という教えです。

私という存在も同じです。

家族、職場、地域、社会、自然、文化、食事、空気、水、過去の経験、社会の仕組み……。数えきれないほど多くの縁が重なり合い、その関係の中で支えられています。

たとえば、職場の上司や同僚とのやりとりが、自分の考え方を変えたり、苦手だと思っていたことに挑戦するきっかけになったりすることがあります。

友人からの何気ないひと言に救われることもあれば、家族とのやりとりが、進学や仕事の選び方に影響することもあります。

今の自分は、そんな周囲との関わりの中で形づくられています。

縁起を踏まえると、人間関係から完全に逃れることができない理由もはっきりします。

私たちは、人との関係がなければ存在できない。その関係が、私を成り立たせているからです。

人間関係を避けるのではなく、整える

人間の苦しみの多くは、人との関係の中にあります。

では、関係そのものを断ち切って、誰にもわずらわされずに、ひとりで生きていくことはできるのでしょうか。

その問いを真剣に考えたのが、お釈迦さまをはじめとする出家者たちでした。

出家とは、家族とのつながりから離れ、社会的な義務や役割を手放し、修行に専念する生き方です。

しかし、出家したからといって「ひとりで生きられる」わけではありません。人は食べずに生きることはできず、誰かの助けなしに衣服や薬を得ることもできません。

そのため、お釈迦さまの教団では、修行僧たちは托鉢によって生活を成り立たせていました。

施しを受けて生きる以上、修行僧の態度やふるまいは、常に慎ましく、礼儀正しくなければなりません。

いただいたものは大切に使い、決して贅沢や浪費をせず、言葉や行いを整えて、支えてくれる人々の信頼に応える。

もし横柄な態度を取れば、たちまち人々の信頼を失い、托鉢による生活は成り立たなくなってしまいます。

修行僧は、一般の人以上に「縁に誠実であること」が求められました。

『六方礼経』に、親子、夫婦、友人、上司と部下、師弟、宗教者と信者など、さまざまな関係性が丁寧に示されているのも、そのためです。

お釈迦さまは、人間という存在が「関係の中で生まれ、関係の中で育ち、関係の中で悩み、関係の中で喜ぶ」ことを、誰よりも理解しておられたのです。

善き人間関係は、人生最大の財産である

どれほど財を成していても、人間関係が荒れている人が幸せそうに見えることはありません。経済的に恵まれながら、孤独に苦しむ人もたくさんいます。

反対に、大きな資産を持っていなくても、信頼できる仲間や家族に囲まれて生きている人は、穏やかで満ち足りた表情をしています。

つまり、「お金」ではなく、善き人間関係が人生最大の財産なのです。

お釈迦さまは、約二千六百年前にこの事実を見抜いていました。

人は縁によって成り立ち、縁によって支えられ、縁によって幸せになる。

だからこそ、お釈迦さまは「関係をどう築き、どう保つか」という課題を避けることなく、真正面から説かれました。

その具体的な指針として伝えられてきたのが、『六方礼経』なのです。


関係を断つ前に、結び直す道を探してみる

人間関係に悩んでいると、私たちはつい「あの人さえ変わってくれたら」と考えてしまいます。

けれども、相手の心や行動を、自分の思い通りに変えることはできません。

その一方で、自分の言葉、自分の態度、自分が相手に対して果たす役割は、今この瞬間から見直すことができます。

本書が教えるのは、すべての人と無理に仲良くする方法でも、苦しい関係を我慢し続ける方法でもありません。

自分をすり減らすことなく、相手を一方的に責めることもなく、それぞれの関係にふさわしい距離と関係性を見つけていくための智慧です。

人間関係の悩みを、完全になくすことはできないかもしれません。

しかし、その悩みを軽くすることはできます。

いま思い浮かぶ人との関係を、もう一度見つめ直してみたい。そう感じた方に、この本を手に取っていただければ幸いです。

書籍のご案内

『人づき合いを円満に育くむ 6つの方角』
著者:大愚元勝
発行:ナーランダ出版

親子、師弟、夫婦、友人、上司と部下、宗教者と信者。お釈迦さまが説かれた6つの人間関係をもとに、相手を変えようとするのではなく、まず自分のありようを整えることで、ご縁を育て直していく方法を解説した一冊です。

ご購入いただいた方には、特典として、通常3,800円で販売していた約129分の動画講座『大愚式 家門繁栄の法則』と、「六方礼拝」ステッカー2枚セットをご用意しています。

▶ 書籍の詳細・ご購入はこちら

※本記事は『人づき合いを円満に育くむ 6つの方角』の「はじめに」より一部を抜粋し、ウェブ掲載用に表記を整えたものです。

寺町ニュース ピックアップ
新刊 ナーランダ出版 どっこいしょ 六方礼経 書籍

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知哲(ちてつ)のアバター 知哲(ちてつ)

福厳寺僧侶/寺町新聞編集長/ナーランダ出版社長。モチモチの大きな手からは想像できない、繊細なクリエイティブを得意とする。佛心宗福厳寺の僧侶であり、映像クリエイター。さらに、グラフィックデザイナーとしても佛心宗の各種取り組みに関わる。YouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答」では企画運営を担当。好物は大根の煮物。

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