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家族のなかに咲いた佛性/佛心の輪インタビュー(3−3日本編) 福厳寺僧侶:雄興知哲(ゆうこう ちてつ)さん

2026 7/08
寺町ニュース ピックアップ 佛心の輪
2026年7月8日

 駒沢大学を卒業後、東京での暮らしに奮闘するも、やがて地元・能登へ戻った知哲和尚。生活を立て直しながら模索を続けていたある日、ご縁が導いたのは、福厳寺での大愚和尚との出会いでした。

 「この出会いはただごとではないかもしれない」
 「この船に乗らないと、大変なことになる気がする」

 そう直感し、まだ見ぬ未来に向け、思い切って舵を切ります。

 動画の知識ゼロから始まった挑戦。カメラの扱いも編集も、すべて手探り。けれど、その一歩一歩が、「一問一答」シリーズという新たな道へと続いていました。

 そしていまでは、登録者数76万人を超えるYouTubeチャンネルへと成長。時代の声に応える仏教の伝え手として、また出版を通じ人と智慧をつなぐ担い手として、歩みを進めておられます。

 今シリーズ最後のインタビューでは、知哲和尚の奥さまとの関係、寺町構想についてなど、さらに深く伺っていきます。

インタビュー1はこちら
https://teramachishinbun.com/cutetsu01/

インタビュー2:はこちら
https://teramachishinbun.com/cutetsu02/

目次

佛性は周りに見出してもらうもの

◾️福厳寺に伺うたびに感じるのですが、お弟子さんたちの機敏な動き、清々しく美しい立ち姿などを拝見していると、規則正しい生活が体にいい影響を与えているように感じます。

知哲:そうですね。お寺の修行生活には、運動がきちんと取り入れられていますし、食事や睡眠も整っています。それが体調のよさや病気予防にもつながるので、結果として医療費も抑えられます。そういう点では、非常に合理的な生活スタイルだと思います。

◾️なるほど。それは確かに理にかなっていますね。

知哲:そうなんです。ある意味でとても最先端な生活スタイルだと思いますね。

◾️ところで、少し話は変わりますが、毎日のお忙しい生活のなかで、奥さまやお子さんとの時間はどのようにつくられているのですか? ご家庭のなかで仏教がどのような役割を果たしているのかについても、ぜひ教えてください。

知哲:それが本当に難しいんですよね。妻はお寺で育った人ではもちろんないので、最初はかなり戸惑いがあったようです。私の僧侶としての福厳寺での役割や、ナーランダ出版の仕事についても理解が難しかったようで、「一体何をやっているの?」と思っていたようです。かといって、無理に「理解しろ」というのも違うと思っていたので、どのようにすればわかってもらえるのか、いろいろと考えました。

◾️そうなんですね。最初はなかなか理解が得られなかったんですか?

知哲:ええ。不信感が強かったと思います。家族行事に参加できなかったり、予定が突然キャンセルになったり、帰りが遅くなることも多くて、「この人、大丈夫なの?」と思っていたのではないでしょうか。

ただ、そんな中でも秋葉大祭や佛心大祭など、福厳寺の行事に少しずつ参加してもらって、手伝ってもらうようにしたことで、やがて状況は変わっていきましたね。

◾️なるほど。そうやって少しずつ関わりを持ってもらったんですね。

知哲:はい。あと、妻は刺繍や裁縫が得意でした。外のパート仕事が終わって、疲れて帰ってきているにも関わらず、それでも縫い物や刺繍をやったりしてるんですね。

 それで、なぜそんなに疲れているのに刺繍をやっているのかと聞いたんです。そうしたら、「これが私の唯一の癒しの時間だ」というんですよね。

 そんな話をあるとき大愚和尚にしたんです。すると、「裁縫が得意なのであれば、作務衣をつくってもらったらいいんじゃないか?」といわれまして。で、妻にその話を持ちかけたところ…。

 最初は「そんなの作ったこともないので、無理!」と怒られました(笑)。

ですが、「ミシンを買うので、ものは試しでやってみたら?」と伝えたところ、それが嬉しかったのか、その新しいミシンを使って、試作品を作ってくれたんです。そしたらそれが意外と上手にできるんですね。

 その後も作務衣の試作を繰り返して、ようやく自信がついてきた頃に、大愚和尚用にも1着プレゼントさせていただいて、気に入っていただけたんですね。

それが妻にとって大きな自信になったようです。そこから経験を積んで、いまでは専属職人の一人として、多くの方に愛される作務作りを生業としています。

自分以外の誰かの喜びは、自分の喜びになる

◾️奥さまの特技が活かされる形になったんですね。販売されている作務衣は奥さまの手づくりされているものなんですね。

知哲:そうなんです。そして、それが家族としての関係性の向上にもつながったと思います。仏教的な視点で見ると、人にはそれぞれ佛性(ぶっしょう:その人の感性。得意としていること)があって、それをどう活かすかが大切なんですよね。それがわかってから、妻との関係もずいぶんよくなりました。

◾️素晴らしいですね。そのような関係に至るまでには長い時間がかかったんでしょうね。

知哲:そうですね。10年かかりました(笑)。ただ佛性は、なかなか自分では気づきにくいものなのかもしれません。妻の場合も、自身の佛性を思わぬ形で発見していただけて、多くの方に喜んでもらえる状態になったことはとても良かったのではないかと思います。

 いずれにせよ、そのような形で、お寺やナーランダ出版にも関わってもらうことになり、ようやく妻も、私の役割や仕事を理解してくれるようになったと安心しています。

 また佛性は、私もそうだったように、周りから求められる形で、ひょんなことから開花するものなんだなと、あらためて感じています。

 なので、今自分には何もないと思っている方がいたとしても、身近な人との関わりの中で、かけられた声や、要望の中にヒントがあって、それに素直に応えてみるのも一つだと思います。

 そのことで周りを喜ばせることができれば、きっとそれはご自身にとって大きな喜びと、自信になっていくと思います。お金になるならないは別として、そのようなことを続けていると、結果的にそれが仕事につながって、お金として返ってくるように思います。

世界に広がる寺町構想

◾️続いて「寺町構想」について少しお聞かせください。知哲さんが考える「寺町」とはどのようなものですか?

知哲:はっきりとした形はまだ見えていませんが、「寺町」は福厳寺の周りだけにとどまるものではないと思っています。むしろ、仏教を学んだ人々が、それぞれの地域で自分たちの仕事や活動を通じ、つくり上げていくものだと感じています。お寺がその場所にない場合でも、仏教の教えを実践する人々がいる場所が「寺町」となり得るのではないでしょうか。

◾️興味深いですね。オンライン上でも寺町が広がる可能性があるということでしょうか?

知哲:そうです。いまの時代、情報は世界中どこでも受け取れます。だから、オンラインでもその教えを実践する人々が集まる場ができれば、それも寺町のひとつの形になると思います。

◾️とても素敵なビジョンですね。寺町のイメージが少しずつ広がっていくように感じますね。

知哲:そうですね。まだ漠然とした部分も多いですが、佛心を持って生きている人がいる場所が、寺町になり得るのではないかと思います。それが小さなコミュニティから始まり、やがて、街になるようなイメージです。

 もちろん、生活していくには仕事が必要ですから、大愚和尚が提唱する「経営マンダラ」を学んだ人たちが、仏教の理念で事業を起こして、地域が活性化していく仕組みをつくっていければいいですね。

 日本だけではなく、アメリカはアメリカで、ヨーロッパはヨーロッパで、また広がっていくと思います。

全国各地で開催される大愚道場によって、佛心の輪が広がっていきます。

◾️それは、特にいまの混沌とした時代に必要とされることのように思います。

知哲:そうですね。自分たちが立ち返る教えや、信念を持っている人たちは行動に迷いがなくなるので、情報が錯綜する現代にこそ寺町は必要になってくると思います。集まる人々が、自分の佛性(得意)を活かして、生活することができるというのは、とても幸せなことだと思います。

すべての場所がそうなるとは思いませんが、そうした守られた場所ができていくのは素晴らしいことです。

◾️お話のなかで、能登のお寺についても触れられていましたが、現在どのような状況なのでしょうか?

知哲:能登の地震の影響で、私の実家のお寺も「半壊」という扱いになっています。本堂自体には大きな問題はありませんが、周囲の建物に被害が出ている箇所が多数あります。

 また、震災の影響もあり、過疎化がさらに進んでいる状態です。そのような状況下で、昔のような地域が戻ることは難しいかもしれませんが、お寺を「地域のため」だけでなく「世のなか全体のために活かせる場所」にしていきたいと思っています。

 たとえば、福厳寺のように、テンプルステイができる拠点として活用できたらと考えています。それが、地域や過疎地のお寺の再生にもつながるのではないかと考えています。

◾️それは素晴らしい取り組みです。一日も早い復興を願っています。

知哲:ありがとうございます。少しずつにはなりますが、前に進んでいきたいと思います。

◾️これまでのお話を踏まえてですが、知哲さんご自身が成長したと感じる部分はありますか?

知哲:自分で成長したと強く感じたことはあまりないですが、以前より制限を感じなくなった部分はあります。

 「これは無理だ、難しい」と思っていたことにも、挑戦してみようと思えるようになりました。それに、失敗しても復活が早くなった気がします。

これは、師匠でもある大愚和尚の様々な取り組みを、間近で見させていただいているというのが何よりも大きいと思いますし、今の環境に居させていただけること、そのご縁に心から感謝したいです。

私は自分に実力はあるとはこれっぽっちも思っていないのですが、自分は相当な幸運の持ち主だといつも思っています。もちろん後悔したり、悩んだり、反省したりの連続ではありますが、それを差し引いても今こうやって、自分の誓願に向かって、多くの方に支えていただき、協力をいただきながらチャレンジできることが、本当に当たり前ではなくて、薄皮一枚の差で、善い方向に進ませていただいているのを日々感じています。

人生って、本当に綱渡りの連続で、普段は何気なく歩いている道ですがそこには危険がいっぱいで、一歩足を踏み外すと、落ちてしまうことに気づかずに、何も考えずに綱の上を歩いていたことに今頃になって気づく日々です。

これが「生かされている」ということなんだなと、思います。
であれば尚更、謙虚に感謝を忘れずに生きていかないといけない。

そんなことを、最近強く思うことが増えてきました。

大愚和尚の作務の様子を映像にした、知哲和尚作の動画

◾️なるほど。それでは、今後の目標について教えてください。

これからは師匠への恩返しをしたい

知哲:やはり、自分の佛性をみいだしてくださった、師匠の大愚和尚への恩返しの意味でも、もっと映像を極めて、多くの方に映像を通じて佛心を広め、寺町構想の具現化に貢献していきたいと思っています。

また自分自身が、小さい頃からお寺で育ててもらい、学ばせていただいたので、少しでも多くの方の苦しみを和らげて、善なる方向へ導いてあげられる、そんな僧侶になれるよう精進します。

そして、ナーランダ出版としても、「世界に知恵の花束を」届けられるよう、スタッフや関わる皆さんと協力して仏教の智慧と、日本人の心を届けていきたいと思っております。

◾️素敵な目標ですね。では最後に、読者のみなさんへメッセージをお願いします。

知哲:この寺町新聞は、まだ始まったばかりの媒体ですが、オンラインでの寺町構想の発信につながるように、これから10年、20年、100年と歴史をつくっていきたいと思っています。

 そのためには、まず寺町新聞の旗を掲げて動き始めることが大切です。いまは、寺町新聞では初期メンバーが中心となって楽しみながら取り組んでおりますが、これがやがて多くの人が関わる媒体となり、それぞれの佛性の花を咲かせていけるような…。そんな未来を楽しみにしつつチャレンジしていきたいと思います。

 読者のみなさんも、読むだけでなく、ぜひ一緒に関わっていただければと思います。興味がある方は気軽に声をかけていただければうれしいです。一緒に寺町新聞を盛り上げていきましょう。

◾️長いお時間、貴重なお話をありがとうございました。

知哲:こちらこそ、ありがとうございました!

 今回のインタビューはいかがでしたか?

 やさしく周りを包み込んでくれる、笑顔と雰囲気をお持ちの知哲和尚。

 動画制作も、会社経営も、すべてはゼロからの挑戦。そんななか、一歩一歩、自分の力を信じて進んでこられたというお話は、私自身、たくさんの勇気をいただきました。

 人にはそれぞれ得意なこと「佛性」があって、それを活かす場が必ずある。そんなメッセージが、静かに、でも確かに胸に届いた気がします。

 これからの「寺町構想」が、どんな広がりを見せていくのか。そこに関わるひとりとして、読者のみなさんと一緒にその未来を見守り、育てていけたらと思っています。

 「ちょっと気になるな」と思ってくださった方は、ぜひ一歩近づいてみてください。あなたのなかの“何か”が動き出す、そのきっかけになるかもしれません。

 次回の佛心の輪インタビューもどうぞお楽しみに。

(取材・文:エンジェル恵津子)

ナーランダ出版が運営する媒体

・YouTube大愚和尚の一問一答はこちら https://www.youtube.com/@osho_taigu

・オンラインストア「どっこいしょ」はこちら https://dokkoisho.store/

寺町ニュース ピックアップ 佛心の輪
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この記事を書いた人

エンジェル 恵津子のアバター エンジェル 恵津子

アメリカのカリフォルニア州立病院で音楽療法士として勤務。和太鼓を用いたセラピーは職員、患者共に好評。音楽以外にも折り紙を用いたセラピーも好評。厳しい環境の中でも、慈悲深く知恵ある人を目指しています。
歌、折り紙、スヌーピーと和スイーツが大好き。

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