MENU
  • ホーム
  • 寺町新聞とは
  • 連載記事
  • 佛心の輪
  • 寺町ニュース
仏教を、もっと暮らしのそばに。
寺町新聞
  • ホーム
  • 寺町新聞とは
  • 連載記事
  • 佛心の輪
  • 寺町ニュース
  • ホーム
  • 寺町新聞とは
  • 連載記事
  • 佛心の輪
  • 寺町ニュース
寺町新聞
  • ホーム
  • 寺町新聞とは
  • 連載記事
  • 佛心の輪
  • 寺町ニュース
  1. ホーム
  2. 連載記事
  3. 逆境のエンジェル
  4. 9月1日問題とトラウマ(第56話)

9月1日問題とトラウマ(第56話)

2026 8/02
連載記事 逆境のエンジェル
2025年9月22日2026年8月2日

➤逆境のエンジェルとは

 アメリカで暮らす筆者が、いじめ、身体障がい、音楽への情熱、異文化での生活、人種差別、仏教との出会いを通じて成長していく物語。個人的な体験を超え、社会の不平等や共生の課題にも鋭く斬り込み、逆境のなかで希望を見出す力を描きます。

➤前回のあらすじ

 編集室に届いたある読者のお便りから、人生について語っています。(第55話『交差する人生と、支え合う事実』)はこちらからご覧ください。


目次

“Suicide Prevention Awareness Month”〜記憶が教えてくれたこと

 9月のアメリカは “Suicide Prevention Awareness Month(スーサイダル・プリベンション・アウェアネス・マンス)”。スーサイダル・プリベンションとは自殺予防のこと。つまり、自殺予防を考える月間です。

 日本でも9月1日の前後には、いわゆる「9月1日問題」が語られます。夏休みが終わり、新学期という節目に胸が締めつけられる子どもたちがいる。その現実はアメリカも同じです。

  私自身、この時期の苦しさを知っています。学生時代、夏休みが終わる1週間ほど前になると、宿題のプレッシャーだけでなく、またいじめられるかもしれない、また教室に溶け込めないかもしれない…という不安に飲み込まれる夜がありました。

 胸の奥に鉛を抱えたまま朝を迎え、食事もあまり喉を通らず、頭のなかでは「お腹が痛いといって休もうか」という考えまで浮かぶ。

 あの感じを、いまでもはっきり覚えています。だから、9月1日に向かう独特の「苦しさ」は、私にもよくわかるのです。

 こうして自分の記憶を並べてみると、胸のざわめきや体のこわばりは「ただの気分」ではなく、心と体が学び取った反応だとわかります。言葉にするなら、それは「トラウマ」の働きと重なっています。

トラウマとは何か

 近年、心の健康について語られることが増えました。その中核にある言葉がトラウマです。

 トラウマとは、心や体が受けた強い衝撃によって刻まれる深い傷。出来事そのものだけでなく、匂い・音・場所と結びついて、ふいに現在を曇らせることがあります。

 理屈では「もう終わった」とわかっていても、体は過去の時間を生き続けてしまう。そのズレに、私たちは苦しくなります。

小さな棘(とげ)のこと【香りの記憶】

 私にもいくつかの小さなトラウマがあります。

 ひとつは、熟れたバナナの香りが苦手というもの。幼いころ、全身麻酔のマスクから漂った果物めいた薬品の香りが体に深く染みつき、「イチゴがいい」と伝えた私に医師が、「ごめんね、バナナしかないんだ」と告げた、その声と匂いだけが、薄れる意識のなかで強く残りました。

 いまも甘い香りがふっと漂うと、過去への扉が開くのを感じます。

日常を狭くする引き金【物置の扉】

 もうひとつは、職場の物置部屋です。

 最初の異変を感じてから発見まで半年以上かかったネズミの死骸。さらに4年前、整理中に棚から飛び降りて足元をかすめたネズミ。

 外から見れば取るに足らない出来事かもしれません。

 けれど、ドアノブに指をかけるたび、理性は「大丈夫」とささやくのに、体は震え、息が浅くなります。

 トラウマは、ときに日常の小さなことをきっかけに、生活の一部を静かに困難にしていきます(それくらいのことと見える出来事でも、当人にとっては感覚が先に反応するのです)。

カレンダーが連れてくる不安【冬から夏へ】

 時期的なものもあります。私は小学生の頃、新年が明けるとすぐに不安が心を支配しました。半年も先のことなのに、水泳の授業の思い出が私を悩ませるのです。

 当時、泳げなかった私を、教師は容赦なくプールに何度も投げ入れました。鼻から入る水の痛み、パニックになって水を大量に飲んだこと、同級生に水着姿を笑われた記憶…。その束が、季節をまたいで私を縛りました。

 こうして並べてみると、出来事は過去にあるのに、反応はいまここで起き続けることがわかります。では、この反応にはどんな種類があり、どこから来るのでしょうか。

トラウマのいくつかの顔

 トラウマにはいくつもの種類があります。

  • 急性トラウマ:事故・災害・暴力など、一度の強烈な出来事で生じる。
  • 慢性トラウマ:いじめやDV、継続的な侮蔑(ぶべつ)や排除など、長期にわたる体験の積み重ね。
  • 複雑性トラウマ:幼少期など発達の要所で繰り返し安全が壊れる体験。
  • 世代間トラウマ:直接経験していない傷が、家族や共同体の歴史を通して感情や反応に影を落とすもの。

 このうち耳慣れない言葉が「世代間トラウマ」かもしれません。これは、直接受けた傷ではないけれど、深く心に根をはる、深刻なトラウマだといえます。

世代間トラウマの具体例

 人種差別の歴史は、その一例です。

 長い年月にわたる差別や排除、監視するまなざし、住む場所や教育・就労機会の制限…。その積み重ねは、つねに周囲を警戒するクセ(過覚醒)や、失敗を極端に恐れる感覚、安心できる場所でも「自分は歓迎されていないかもしれない」という前提につながることがあります。

 本人が差別を受けた記憶を語らなくても、祖父母や親が沈黙して背負った歴史が、家族の空気や日常の選択ににじみ、無言のルールとして伝わってしまうのです。

 家庭環境にも例があります。

 戦争体験や極度の貧困、家族内の暴力、依存症などで、親の世代に「安全はいつも突然失われる」という学習が刻まれていると、次の世代は大声や足音、物音への過敏さ、衝突を避けて本音をいえないクセ、あるいは逆に感情が爆発してしまう反応として現れることがあります。

 どれも、生き延びるために身につけた、不器用な知恵の形だといえます。

体は生きようとしている

 ここで、大愚和尚の言葉を思い出します。

 「心が死を選びかけていても、体は生きようとしている。傷ついた体は、その瞬間から修復を始める」。

 この一節を初めて聞いたとき、私は衝撃を受けました。

 そうか――。もしいま、心が暗い水の底に引きずられているように感じても、体のどこかでは、確かに生の側に向かう働きが続いている。その事実自体が、小さな希望の光になるのだと。

仏教の視点:苦と手放し

 仏教では、人の生には「苦」がつきまとうと率直に語ります。これだけを聞くと暗く思えるかもしれませんが、ここで示されているのは絶望ではなく、現実への眼差しです。

 9月1日に向かう胸の重さ、教室へ向かう足のすくみ、匂いひとつで過去にさらわれる瞬間 …。

 それらを「あってはならない」と押しやらず、「確かに、ここにある」と見つめて受け入れる。苦を否定しないとき、私たちは初めて自責や固執から少し離れ、前に進む選択肢が見えてくるのではないでしょうか。

 そして「手放す」。ここでいう手放しは、無理に忘れることでも、気合いで克服することでもない。握りしめているものに気づき、指を一本ずつ、ほどくように力をゆるめることです。

 握りしめていたのは恐怖だけではありません。「強くあらねばならない」「早く治さねばならない」「迷惑をかけてはならない」。

 そんな掟を手のなかで固く握りしめ、血が通わなくなっていたのかもしれない。少しずつほどくと感覚が戻り、体が呼吸を思い出す。ゆるみが生まれると、選択の幅が広がります。

日々の手がかり

行ける場所・話せる相手

 辛いときに行ける場所、話せる相手がいる。そのシンプルな事実が、確かに心の救いにつながるのだと思います。

 私が週末にパート勤務をしているメンタルクリニックでも、子どもや10代の若者が、同じ境遇の同世代の顔を見るだけで、肩の力が少し抜けたり、短い会話のなかで「自分だけじゃない」と確かめられたり。環境が変わることで、気分がすっと上向く場面を何度も見てきました。

 大切なのは、こうした支えが医療機関でなくても成立するという点です。

 身近なお寺や神社で、住職さんや神職の方にひとこと声をかける。公民館のラウンジや、地域の食堂の一角が静かに開かれていて、ただ座ってもいい、少し話してもいい、泣いてもいい。

 そんな場が日常にあるだけで、心はずいぶん楽になります。地域のなかに、気軽に立ち寄れて、深刻な話も他愛ない話もできる場所が増えてほしい ーーそう強く感じています。

 次回は、今回のテーマをもう少し深掘りして、実際にアメリカではどのような試みがされているのか。また、筆者の臨床経験も含めてお話しいたします。

第57話はこちら

記事の一覧はこちら

(感想、メッセージは下のコメント欄から。みなさまからの書き込みが、作者エンジェル恵津子さんのエネルギーとなります。よろしくお願いします。by寺町新聞編集室)

連載記事 逆境のエンジェル

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

Follow Me
よかったらシェアしてね。
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
  • 大愚和尚のワールドツアー(秋)募集が始まりました!(2025年10月)
  • 『自分という壁』英語版&スペイン語版 刊行のご案内

この記事を書いた人

エンジェル 恵津子のアバター エンジェル 恵津子

アメリカで音楽療法の仕事に携わりながら、異文化、人との出会い、心の問題、社会などをテーマに執筆。日々の経験や感じたことを、心理学や仏教の教えと重ねながら、「逆境のエンジェル」「カルチャーブリッジ」などで綴っている。歌、折り紙、スヌーピー、和スイーツが好き。

関連記事

  • 【カルチャーブリッジ】アメリカ人は今、何を信じる? 「慈光」2026年7月号Vol 6−1
    2026年7月29日
  • 【大愚和尚の物語~一隅を照らす~】第5話~レッツ・スタート・イングリッシュ!~
    2026年7月25日
  • 「まむしに噛まれた!」と思った私が、本当に噛まれていたもの?(第67話)
    2026年7月20日
  • 【カルチャーブリッジ】二つの文化の間で 「慈光」2026年4月号Vol 5−3
    2026年7月7日
  • 【カルチャーブリッジ】沈黙が遺したもの〜戦時収容所の日記から 〜「慈光」2026年4月号Vol 5−2
    2026年7月2日
  • 褒め方と自己肯定感(第66話)
    2026年6月22日
  • 【大愚和尚の物語~一隅を照らす~】第4話~誰もが秘めている、光と闇
    2026年6月20日
  • 【大愚和尚の物語~一隅を照らす~】第3話~悲喜こもごもの青春と波乱~
    2026年5月30日

コメント

コメントする コメントをキャンセル

このサイトは reCAPTCHA によって保護されており、Google のプライバシーポリシー および 利用規約 に適用されます。

reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。

Tags
あきば大祭 お寺と宗教の歴史 お盆の過ごし方 ご縁日 どっこいしょ どんな悩みも手放せる100の言葉 オンラインストア ナーランダ出版 ニチコレ 一問一答 中道 人間関係 今週の一面 仕事も人間関係もうまくいく離れる力 佛心僧学院 佛心大祭 佛性を活かす 僧侶クリエイター 六方礼経 内弟子道場 副住職便り 大愚和尚 大愚道場 失敗談 寺町構想 慈縁の会 新刊 正しく恐れる智慧 禅語 福厳寺550周年 素朴な疑問 経営マンダラ 編集部おすすめ
新着記事
  • 第1回 寺町は、町の名前ではない。大愚和尚が描く「寺町構想」とは?
  • 盆踊りがつなぐ、生者と死者の輪
  • お寺は、用事がなくても入ってよいのでしょうか?
  • 「やらかし」は、誰かの智慧になる
  • お盆は、家族の記憶をつなぐ日
記事カテゴリー
  • 副住職便り
  • 大愚和尚のお話
  • 寺町ニュース
  • 寺町行事報告
  • ピックアップ
  • お知らせ
  • 佛心の輪
  • 母からの便り
  • 連載記事
    • 寺町の素朴な疑問箱
    • 寺町構想とは?
    • 大愚和尚の物語
    • アニメに見る仏教
    • カルチャーブリッジ
    • 逆境のエンジェル
    • アマゾンの侍
    • 禅語マンガ
  • The Message
運営会社

株式会社ナーランダ出版

ナーランダ出版は「世界に知恵の花束を」をコーポレートメッセージに掲げ、仏教の智慧、日本人の「知恵/伝統の技/こころ」を世界に配信します。

This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.
  • 寺町新聞とは
  • プライバシーポリシー
  • 特定商取引法に基づく表記
  • お問い合わせ

© 寺町新聞.

目次