寺町ニュース

【福厳寺オリジナル数珠・制作物語 vol.5〜想いの結集〜】

この記事では、福厳寺オリジナル数珠制作の過程や、制作にまつわるエピソード、プロジェクトメンバーの気付きなどを、計6回にわたりご紹介していきます。

【前回までのあらすじ】

「善友との『絆の証』がほしい」という思いから始まった数珠制作プロジェクト。材料選びを経て、私たちの思い描くお数珠がいよいよ形になり始めました。プロジェクトは「木材の引渡し」の段階へ。完成まであと一歩です。

福厳寺オリジナル数珠・制作物語 vol.1〜善友への想い〜
福厳寺オリジナル数珠・制作物語 vol.2〜花まつりで咲いた善友の笑顔〜
福厳寺オリジナル数珠・制作物語 vol.3 ~繋がるご縁~
福厳寺オリジナル数珠・制作物語 vol.4〜数珠で広がる協力の輪〜 

ここからは、大切な木材がお数珠へと生まれ変わっていく様子をお届けします。ぜひ最後までご覧ください。

生命の香り

これまで、福厳寺のお弟子さんや職人さんによって大切に保管されていた檜(ひのき)と欅(けやき)。その大切な木材を使わせていただくことに、私たちは大きな責任を感じていました。

事前に制作店様にサンプルの木片をご確認いただき、材質としては、加工が可能であるとわかっていましたが、それでも、持ち込む木材すべてが利用できるとは限らず、不安が残ります。

というのも、乾燥が不十分なものや、中心部分に傷んでいるものは、加工に適さないからです。

しかし、こればかりはプロの目で1本1本の状態をご確認いただくしかありません。また万が一、これらの木材が使用不可となった場合、完成予定日が大きくずれこんでしまいます。

ならば、一刻も早いうちに制作店様にお渡しして、直接ご確認いただかなければと、7月初旬、早速木材を受け取りに、福厳寺へと向かいました。

さきほどまで降り続いていた雨の影響か、境内が湿気で蒸し返す中、「どうか木材が湿気っていませんように」心の中でそう唱えながら、お弟子さんにもお手伝いいただき、木材を車へ積み込みました。

その帰り道。ドライブインから戻り、ドアを開けた瞬間、私は思わず息をのみました。桧の豊潤な香りが車内に充満していたのです。芳香剤とはまったく違う、自然が放つ香りです。

私は、その香りに生命を感じ、「この木材なら、きっと使ってもらえるはず」そう強く確信しました。

粋な計らいに感謝して

7月中旬。この日私は、木材を届けるため、京都へ車で向かいました。

「京都の道は複雑だと聞くけれど、カーナビさえあればたどり着けるはず。」しかし、そんな私の予想は、見事に音を立てて崩れました。

制作店様の数百メートル手前までは、なんとか近づけるものの、ほとんどの道が一方通行のため、どうやってもお店にたどりつけないのです。付近を20分近く回り、ついにギブアップ。すでにお店に到着していたメンバーに電話で助けを求めました。

すると数分後、お店のご担当者さんが、自転車でお迎えに来てくださるではないですか。

「おはようございます!よくここまでいらっしゃいました。ついてきてください」

そのまま先導され、お店に到着。こうして、なんとか無事木材をお届けすることができました。

「きれいですね。この木材なら大丈夫でしょう。」

ご担当者さんの、優しい笑顔と確かな言葉に、一同ほっと肩をなでおろしました。

と同時に、「いつも粋な計らいで助けてくださったご担当者さんとお会いするのは、これが最後かもしれない」そんな寂しさが、一気にこみ上げてきました。

私たちは、ご担当者さんに精いっぱい感謝の意をお伝えし、お店を後にしました。


「佛心宗の念珠」

お数珠の加工が進む一方で、パッケージと奥書(おくがき。説明書のこと)の制作にも着手しました。デザインは、寺町新聞編集長である知哲さんにお願いすることに。

9月中旬、制作店様からの待ちに待ったお数珠完成の一報が届き、いよいよお数珠梱包の日がやってきました。

「パッケージデザインは、梱包当日までお楽しみに。」そう聞かされていた私たちは、ワクワクしながら福厳寺に向かいました。

そこには、できたてほやほやのお数珠。そして、細部まで考え抜かれた言葉の数々と、落ち着いた和柄がほどこされたパッケージと奥書が待っていました。

なにより「佛心宗の念珠」の文字を見た時には、感慨ひとしおでした。これまでの道のりを思い出し、このお役目をいただけたことに心から感謝しました。

ここまで5回にわたりお届けしてきたこの記事も、次回がいよいよ最終章です。素晴らしいお数珠と、想いを込めたパッケージ。2つが1つになったとき、どんな念珠が完成するのでしょうか。どうぞ楽しみにお待ちください。

編集後記

今回、知哲さんがデザイン・制作してくださったお数珠の奥書には、日本の伝統文様が使われていました。

日本の伝統文様には【牡丹(ぼたん)、波千鳥(なみちどり)、唐草(からくさ)、市松、扇】など、たくさん種類があります。その中で、なぜこの文様を選ばれたのだろうかと気になり、調べてみると、これは【七宝(しっぽう)】という文様であることがわかりました。

【七宝(しっぽう)】
仏教の教典に出てくる七種の宝のことで、金、銀、瑠璃(るり)、玻璃(はり)  、しゃこ貝、サンゴ、瑪瑙(めのう)であるといわれてます。

文様にはそれぞれ意味があり、円が連鎖する【七宝】には、円満、調和、ご縁などの願いが込められているそうです。さらに調べていくうちに、「人のご縁やつながりには、七宝と同等の価値がある」との記述を見つけました。

『ご縁やつながり』

それはこのお数珠制作のきっかけでもあり、このプロジェクトを通じて私たちが改めて感じたとても大切なことでもあります。

デザインは見た目だけでなく、その背景まで表現するもの。細部に至るまでの心遣いとその美しさの意味を、知哲さんのデザインから学ばせていただきました。

あきば大祭でお数珠を手に取っていただいた際は、ぜひこの奥書に込められた【福厳寺七宝】もご覧いただければと思います。

次回の記事へ→~善友との繋がり~ 佛心宗オリジナル数珠・完成ご報告【制作物語vol6】

                 真香 理芳

最新の投稿

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です