➤逆境のエンジェルとは
アメリカで暮らす筆者が、いじめ、身体障がい、音楽への情熱、異文化での生活、人種差別、仏教との出会いを通じて成長していく物語。個人的な体験を超え、社会の不平等や共生の課題にも鋭く斬り込み、逆境のなかで希望を見出す力を描きます。
➤前回のあらすじ
久しぶりに帰省した日本。海外にいるから気づく日本のよさについて、語っています。(第60話『海外在住25年、帰省して気づいた日本文化と仏教の教え』)はこちらからご覧ください。
2026年のはじまりに、そっと足元を見る
静かな年越しの夜に
2026年の北カリフォルニアの年明けは、雨で、大晦日に打ち上がる花火もなく、静かな夜でした。
大晦日は仕事で、家に帰った頃には、正直かなり疲れていました。
少し横になるだけのつもりが、そのまま眠ってしまったようで、目を覚ましたら、年明けまであと30分という時間でした。
年越しそばも食べていないな、と思いながら、隣では、私が起きるのを待ちきれなかった夫が、すでに寝息を立てていました。
その寝息を聞きながら、昨年のことを、ぽつぽつと思い返していました。
振り返ると、張りつめていた一年
この連載で書いてきたこと。
ワールドツアーで、大愚和尚が2度アメリカに来られたこと。
仕事場の同僚や夫、友人との会話、そこから得た気づき。
老いゆく母の変化や、私自身の体調の変化。
そして、緊張状態が続く世界情勢。
振り返ってみると、気を張って過ごしてきた一年だったような気がします。
年が変わったからといって、急に何かが変わるわけではなく、カレンダーが1枚めくられるだけ。
それでも、新しい年のはじまりには、少し空気が違う感じがあります。
2026年も、そんなふうに始まりました。
ニュースに触れて、疲れてしまう心
新年の清々しい空気を感じながら、スマホでニュースを開くと、世界の不安定さや、日本社会の問題が、淡々と流れてきます。
事故や災害、対立や分断。
どれも、前から続いている話なのに、続けて目にすると、気持ちが重くなります。
「今年はよい年になりますように」。そう願いたい気持ちはあります。でも、なんとなくその言葉が、上滑りしてしまうような感覚もありました。
世界では、いまだ緊張した状態が続いている地域があります。
日本でも、物価やエネルギー、人口、支える側の疲れなど、簡単には解決しない問題が積み重なっています。
私は、災害の当事者でも、事故の当事者でもありません。それでも、ニュースを見ているだけで疲れてしまったり、理由がはっきりしないまま、ため息が出る日があります。
以前は、そんな自分に、「気にしすぎかな」「もっと前向きにならないと」と思うことが多くありました。
でも、この数年、そしてこの連載を書きながら、「そう感じるのも、無理はないのかもしれない」と思うようになりました。

足元を照らす小さな灯り
不安な情報が多ければ、心が疲れるのは自然なことです。それは弱さというより、ちゃんと感じている、ということなのかもしれません。
仏教に「自灯明(じとうみょう)」という言葉があります。「自分を照らす灯りを、自分のなかに持ちなさい」という教えです。
世界が落ち着かないとき、誰かが答えを出してくれるのを待っていると、かえって不安が増えることがあります。
そんなとき、
「今日は、どこまでなら大丈夫かな」
「いまの自分は、少し疲れていないかな」
そうやって足元を確かめることが、意外と助けになります。
もうひとつ、「諸行無常」という言葉があります。すべては変わり続ける、という意味です。
いま感じている不安や息苦しさも、このまま同じ形で続くわけではありません。だからといって、「そのうちよくなるから」と、我慢し続ける必要もないのだと思います。
変わっていくからこそ、いまの自分の状態に、ちゃんと気づいていたい。最近は、そう思うようになりました。
今年、私が整えたいこと
よく見ると、派手ではないけれど、あたたかい場面は、日常のなかにたくさんあります。
誰かを気づかう「どうぞ」「ありがとう」「私がやります」という一言。
今日も、特別なことはなくても、働いている人たちの姿。毎朝のように、家の前を通っていく七面鳥の群。

「希望」と呼ぶには、少し大げさかもしれません。でも、確かに続いているものがあるように感じます。
2026年は、何かを大きく変えなければならない年、というより、立ち止まりながら、整えながら進んでいく年なのかもしれません。
急がなくてもいい。ただ、足元に小さな灯りを、灯し続けられるように。
私が今年、整えたい一番のこと。それは、口から出る言葉です。
書く言葉は、読み返して、書き直すことができます。でも、口から出る言葉は、そうはいきません。
ふとした一言が、誰かを傷つけたり、自分自身を追い込んでしまうこともあります。だから今年は、口から出る言葉に、もう少し意識を向けていきたいと思っています。
仏教でいうところの「愛語」です。
今年もまた、そんなことを心に留めながら、一歩ずつ歩いていけたらと思っています。
次回の投稿は2月23日(月)です。
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