あきば大祭

己のけがれを焼き尽くす〜あきば大祭2022#1~

日ごとに寒さがつのる12月3日、福厳寺ではあきば大祭が開催されました。当日は、例年にも増して多くの参拝者が来場、大盛況であきば大祭を執り行うことができました。

コロナ感染症予防のため奉賛者はマスク着用を徹底するなどの対策を施し、お祭り広場は安心して楽しむ参拝者の姿であふれていました。

これから3回にわたり、あきば大祭当日の福厳寺の様子をご紹介いたします。残念ながら今回参加できなかった方も、あるいはご参加いただいた方も、来年に思いをはせつつぜひご一読ください。

三毒を鎮めよ」|あきば大祭を支える3本柱

あきば大祭は、福厳寺で540年以上続いている「『三毒』(欲望・怒り・愚かさ)の心の火を鎮めて、『三徳』(慈悲心・忍耐力・智慧)を育てなさい」という教えを守り伝えるための祭事です。

大きく分けると、「ご祈祷・火渡りの儀・お祭り広場」と大きく3つの行事で構成されています。まずは、行事の意義をご紹介します。

1)ご祈祷

「ご祈祷」とは、正式には「加持祈祷(かじきとう)」といいます。本堂左手にある長い大階段を上がったところに立つ赤色の秋葉総本殿に祀られている「秋葉三尺坊大権現(あきばさんじゃくぼうだいごんげん)」の前で祈祷を行い、参拝者は木札を授かります。

授かった木札は、それぞれが家庭に持ち帰り、目線より高い場所に祀ります。木札に向かって常に手を合わせることで、あきば大祭で決意を新たにしたことを忘れないように努めるためのものです。これを「加持(かじ)」といいます。

この日は11~16時の5時間にわたり、多くの皆様がご祈祷に臨まれていました。ご祈祷は予約申し込みが必要です。例年、早い時間帯のご祈祷は席が埋まりやすいため、ご希望の方は事前のお申込みをおすすめします。

2)火渡りの儀

先陣を切って進む大愚和尚に続き、次々と燃え盛る火の中を渡る中心行事です。例年1000人を超える人々が渡り、心身を清めています。

現代に生きる私たちは、さまざまなストレスが引き金になって、時に怒りや欲望という感情に支配されてしまうことがあります。この欲望や怒りという「心の火」は、それまでに築きあげた信用を一瞬にして奪う可能性のある恐ろしいものです。

一方、物理的な火も大変熱く、私たちの大切なものを一瞬で焼き尽くしてしまう恐ろしいものでもあります。この火の中を進んで熱さや恐ろしさを体感することで、同時に「心の火」の恐ろしさを知り、熱く燃え盛る火の前では、自分がいかに無力ではかない存在であるかを悟り、穏やかな精神を取り戻します。

自らの心は、自らコントロールする――このことの重要性を自ら学ぶための儀式です。

本年は、松明(たいまつ)行列や大愚和尚の法話の後、17時30分より約2時間にわたって執り行われました。

3)お祭り広場

お祭り広場では、佛心会会員が運営するブースや、キッチンカーが多数出店し、参拝者の心と冷えた体を温めます。家族、友達、恋人、そしてご縁をいただき出会った人々と、お祭りならではの人が集うことの楽しさや心が躍る感覚を共有できることも醍醐味の一つです。

当日は、各交流ブースや、大愚和尚のグッズ販売、写経・写仏のワークショップ、9台のキッチンカーが出揃い、大祭の最初から最後まで盛り上がりを見せていました。

功徳(くどく)を心に焼き付ける~ご祈祷~

時刻は11時、秋葉総本殿では1回目のご祈祷が始まりました。燃え盛る炎をほうふつとする朱のお着物に身を包んだ大愚和尚と僧侶4名により、「大般若転読(だいはんにゃてんどく)」が行われます。

大般若転読とは、「大般若経」という膨大な量の経典を、一巻ずつ頭上の高くまで持ち上げてパラパラとめくりながら転読(てんどく、広げて流し読む)をする儀式で、これによって仏の智慧を授かるといわれています。

この後、秋葉真言(オンヒラヒラケンヒラケンノンソワカ)を唱え、心の火を沈めるだけの冷静な知恵と秋葉三尺坊の力を授かります。

参拝者1人1人の頭上で厚い経典をパラパラとめくり、経典の功徳が参拝者に降り注がれていきます。

これにてご祈祷は無事終了です。神殿の中に響き渡る僧侶の読経の声に圧倒される一幕でした。

智慧の火をいただく~松明行列~

さて、時刻は16時30分。こちらは松明行列の準備開始の様子です。僧侶たちが福厳寺の金の観音像前で法要を行った後、観音菩薩から受け継いだ、火渡りのための智慧の火が灯されます。

僧侶が先導して、松明行列の開始です。

天狗や山伏の姿でほら貝を吹く僧侶も。

佛心会会員が観音菩薩の智慧の火を灯した松明を持ち、秋葉総本殿へと向かいます。

本堂前で火渡りを待つたくさんの参拝者の中を進みます。

この後秋葉総本殿に運ばれた智慧の火は、僧侶によるご祈祷がなされ、秋葉三尺坊大権現の火と合わさり、火渡りの儀を待ちます。

日が傾く頃になり徐々に冷え込み始めますが、火渡りの列に並ぶ参拝者はどんどん増え続け、本堂前は参拝者の熱気で溢れ返っていきました。

心を尽くして~奉参(ほうさん)~

あきば大祭というと「火渡りの儀」ばかり注目されがちですが、その裏で当日朝から様々な儀式が執り行われ、またその何日も前から、佛心会会員により「奉参(ほうさん)活動」が行われています。奉参とは、自身の私利私欲を離れ、他者のために行う利他行のことで、大祭に関わる、たくさんの方々が、心を尽くして境内の清掃や整備を行いました。

それぞれの行事や儀式の意義を知り参加することで、より深く「心の三毒を落とす」体験ができます。ぜひご祈祷や松明行列なども合わせてのご参加をおすすめします。

編集後記

書き手の私は、今回が初めてのあきば大祭取材でした。とても人気のあるお祭りであるとは伺っていましたが、当日の参拝者のあまりの多さに、コロナ時代を乗り越えてなおこれだけの方に望まれる大祭なのだと実感し、取材に身が引き締まりました。

華やかな大祭の裏で、何ヶ月も前から準備をされてきた福厳寺の皆さん、奉賛者として場を整えられた佛心会会員の皆さん。その真剣な表情は、これまでの行事とは一味違うものを感じました。そして、ただの祭事ではなく、この日が「人々を救済する日」であること、その意義を少しずつ実感させられていきました。

次の記事では、お祭り広場の様子や参拝者とスタッフのインタビューをご紹介します。ぜひご覧ください。(#2の記事はこちらから)

桐嶋つづる

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