寺町の風

きつねからの手紙〈寺町の風〉

師走の足音が聞こえはじめ、心も体もせわしい時期となりました。
寺町編集室も、12月2日のあきば大祭を控え、おおわらわな毎日です。

そんな中、先日福厳寺境内で打ち合わせをしていると、窓の外に1匹の痩せ細ったきつねが姿を現しました。それも、二度。

きつねは、季節ごとに栄養を確保する知恵を持ち、冬眠はしません。生き抜く力は抜群といわれるほどの動物です。

しかし、私が出会ったきつねは、とても栄養十分とは言い難く、福厳寺ほどの豊かな自然の中でも、エサを求めるのは難しいのかと、なんともやるせない気持ちになりました。

昨今、街に熊が出没して、人を襲うというニュースをよく耳にします。熊もきつねも、通常は人にあまり姿を見せない動物のはず。にも関わらず、人間の前にこれほど姿を現すとは、森の中では一体何が起きているのか……

「自然は、確実に変化している。さて、あなたはどうする? 」

二度にわたり姿を見せてくれたきつねから、そう書かれた一通の手紙をもらったような気持ちになりました。

寺町新聞の名前にもある寺町には、「寺町誓願」という誓いがあります。

【寺町誓願】
願わくは、善友、生きがい、サンガの三果を結び、
明豊美徳の寺町を世界に創造せんことを

「明豊美徳」の寺町。明るく豊かなのは、人間の暮らしだけではなく、自然界全体の豊かさを指していると私は考えています。

豊かな自然と共存する町
人々の暮らしが、自然循環の一部となる町

私には、「環境破壊を止める」などと大きなことはできません。でも、寺町の様子を伝える身として、個人として「ちょっとしたこと」をしたい。

そして私だけでなく、一人一人が「小さなことを少しずつ」実現できたら、大いなる自然もいつかそれに答えてくれると思うのです。

しかし、私にはまだ、自然を守り育てるだけの知恵がありません。

それならば、自らの学びと実践も含め、「自然循環の中の暮らし」をテーマに、寺町の人たちの「自然に対する小さな工夫」をクローズアップしてはどうだろうか。そして、それを広くお伝えしていく。

きつねからの手紙を受け取ったあの日から、頭の中でそんな構想を抱くようになりました。

真の「明豊」を目指し、自分のできることから少しずつ始めたいと考えています。

志保

ABOUT ME
志保
寺町新聞・副編集長。自身を「透明なうつわ」と捉え、向き合った人の「色」を鮮やかに描き出すことに心を燃やす。執筆・編集のほか、企画ディレクターとしても活躍。回遊魚のごとく、日々人探しと情報集めに奔走している。好きな食べ物は、しょうがの甘酢漬け。
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