寺町の風

当たり前の風景が、当たり前ではなかったと気づいた日〈寺町の風〉


2024年もはや2週間が過ぎましたが、いかがでお過ごしでしょうか?

まずはじめに、1月1日の能登半島地震により犠牲となられた方々に、おくやみ申し上げるとともに、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。

そして、1日も早い復興と、被災者の皆さまに平穏な日々が戻りますことをお祈り致します。

当たり前の風景が、
当たり前ではなかったと気づいた日

さて、すでにご存知の方もあるかも知れませんが、

私(知哲)は、大愚和尚のもと、佛心宗の僧侶としての活動や、YouTubeの配信、ナーランダ出版、そして寺町新聞に関わらせていただいておりますが、実は石川県能登半島にあるお寺の住職も同時に勤めさせて頂いている身であります。

普段は父親に留守を守っていただいて、福厳寺のある愛知県小牧市にいるのですが、年末年始は石川に帰省しており、ちょうど今回も、大晦日、元日と、能登のお寺に戻っておりました。

例年同様、1日は午前中に法要と檀家さんとの新年のご挨拶をしておりました。そして午後から母親の実家のある金沢に移動したのですが、到着直後の16時すぎに、今回の地震にあいました。

たまたま金沢にいたこともあって、幸にして、私の家族親戚も全員無事ではありましたが、能登のお寺にいた父は、震度7の地震の直撃を受け、建物が揺れ動く中、お寺から命からがら飛び出し助かったという連絡を受けました。

父から送られてきた写真を見ると、墓石は散乱し、建物の壁やガラス窓は割れ、仏像やお位牌も倒れて、中も外もぐちゃぐちゃな状態でした。

また、県道からお寺まで続く一本道の山道には亀裂が入り、車での走行が難しいとのことでした。

その後すぐに能登に戻って、お寺の状況を確認して来ようと思ったのですが、金沢から能登へ続く幹線道路は、10ヶ所以上に渡って崩落し、まともに通行できる状態ではなく、さらには余震が頻繁に続いていたため、二次被害を避けるためにも、能登への移動を断念せざるを得ませんでした。

父は、1週間ほど避難所生活に入っておりましたが、今現在は電気が復旧したこともあって、お寺の住まいの隅にある、平屋の倉庫で寝泊まりしているようです。

私も余震が心配なので、安全な避難所での生活をすすめたのですが、大人数での生活に気を使うのか、自分の部屋が良いと言って聞き入れてくれません。

また、電気は来ていても、断水は続いており、お風呂には入れていないとのことです。

父以外にも、現地の友人、お世話になった方々は、避難所や車中での生活を送っているようで、支援物資が行き届いていなかったり、避難所生活のストレスで、口論やケンカがあったり、インフルエンザやコロナなどの感染症も問題になってきていると言います。

そんな中、現在、私は福厳寺のある愛知県に戻ってきておりますが、テレビの画面で、被災地の状況を見るたびに、父親をお寺に残してきてしまった後ろめたさと、被災したお寺の状況が確認できていない焦りと、無力感にさいなまれます。

ですので、道路の状況、雪の状況が落ち着いたタイミングで、あらためて能登に戻って、まずは震災の状況を確認して来ようと計画をしております。

その上で、今後どのように、立て直しをはかっていくか、全く目処は立ちませんが、現実を受け止め、考えていきたいと思っています。

そして有難いことに、ご心配のメールや、お見舞いのメッセージ、何かしらお役立てくださいとご寄付をいただいたり、本当に多くの方々に支えて頂いていることを実感し感謝するばかりです。

これからのこと

師匠である大愚和尚からも、このような時の心構えとして、

正しく恐れよ」というアドバイスをいただきました。

テレビや、メディアの情報に振り回され、煽られ、焦ったり、迷ったりせず、まずはしっかりと地に足をつけて、自分の目で足で状況を確認し、現実的に、今できること、少し時間が経ってきてからできること、さらにその先のこと、その時々によって変わっていく状況を踏まえて、その都度よく考えて行動すること。

それが「正しく恐れる」ということであると、教えていただきました。

また、長い目で見たときに、人間の歴史は「激動」の連続であって、大変なことは今に始まった事ではない。だから、現代に生きる我々は、これまでの歴史に学び、先人たちの知恵を学び、現実の問題に立ち向かっていくことが大切である。という言葉をいただきました。

せっかくコロナも落ち着いて、これからという時に、また地震に見舞われて、しかも元日に。そんなことあるのか・・・。と、落ち込んでいた私の心に、喝が入ったのを感じました。

うまく言葉にはできませんが、私の気持ちとしては、

いつどこで地震が起きてもおかしくない、この日本にいて、そのことに怯えながら生きるより、できうる備えと、対策を講じた上で、あとは今自分にできることを精一杯やる。

まだまだ、被害の全貌が見えず、被災地では今もなお苦しい状態が続いていて、前を向くことも厳しいと思いますが、

少なくても自分自身はそのようなあり方をしようと決めました。

きっと、このメルマガを、ご覧になっている方々の中にも、ご自身が被災された方も、ご親戚やご友人が被害に遭われた方もいらっしゃって、ご心配、ご心労も多いと思いますが、大事なことは、被災者の方々に寄り添いつつも、この現実を受け止めて、これからどうしていくかが大事で、


直接被災をしている、していないに関わらず、この出来事をどのように捉えて、どのように自分の生き方、人生にフィードバックしていくか。それが大事なのではないかと思いました。

能登地震の復興は、まだまだこれからですが、一人でも多くの、能登の人々が、能登以外の人々が、そのような気持ちになることが、能登復興の第一歩だと思います。

先日も寺町新聞スタッフからの提案がありましたが、今後は「寺町新聞」でも、何かしら自分たちのできることで、能登半島地震の復興の手助けになる活動や、義援金の受付なども検討していこうと考えておりますので、ご協力いただける方がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。

追伸

人間ができること、人間の計らいには限界があり、
大自然の力には、到底かないません。
一瞬にしてこれまでの常識が変わってしまうくらいの出来事が起こります。

だからこそ、今目の前にある当たり前だと思っていること、風景は、実は当たり前ではなかった。そのことに気づいて、あらためて感謝の気持ちを思い起こす。
その心を忘れず生きていきたいものです。

人生は苦難の連続ですが、仏教ではそれがデフォルト(当然のこと、大前提)ととらえます。慌てず、焦らず、正しく恐れて、一歩づつ歩みを進めていきます。

励ましのメッセージ、応援の手紙をくださった方々へ、この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

知哲 合掌

ABOUT ME
知哲(ちてつ)
寺町新聞編集長。ナーランダ出版社長。モチモチの大きな手からは想像できない、繊細な表現を得意とする。佛心宗福厳寺の僧侶であり、映像クリエイター。さらに、グラフィックデザイナーとしても佛心宗の各種取り組みに関わる。YouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答」では企画運営を担当。好物は里芋の煮っころがし。
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POSTED COMMENT

  1. さとし より:

    地震の被害に遭われた方々大変でした。今後愛知県でも地震が起こることが懸念されておりますが正しく災難と向き合っていきたいです。

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