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いじめで「全部」を否定された日ーー子どもの心に残った絶望と救い 逆境のエンジェル(第3話)

2026 8/02
連載記事 逆境のエンジェル
2024年2月5日2026年8月2日

➤逆境のエンジェルとは

 アメリカで暮らす筆者が、異文化のなかで感じる違和感、人とのすれ違い、老いや心の揺れ、ときには自分自身の失敗を通して、「人はどうすれば、思い通りにならない人生をよりよく生きられるのか」を考えます。仏教の教えも交えながら、日常のなかにそのヒントを探す連載です。

➤前回のあらすじ

 結婚生活を通じてよみがえった筆者の子ども時代のトラウマから、幼少期にさかのぼり、学校でのいじめや、筆者の身体障がいが原因で口論する両親の姿、そのような状況下での心理的変化をお話します。(第2話『大人になって蘇った、子どもの頃のいじめーー給食時間に残る孤立の記憶』はこちらからご覧ください)

目次

なぜこんな仕打ちを受けるの?

 小学生の頃のある日、昼に母が迎えに来る予定を担任に伝え忘れていたことがありました。給食を食べていると、同級生に母が迎えに来ていることを知らされました。

 言い忘れていた罪悪感と、恥ずかしさにさいなまれながら、教室で一緒に食事をしていた担任のところへ行き、母が迎えにきていることと、伝え忘れていたことを謝りました。

 すると、担任教師は私を叱りながら、何度も何度もボールペンの裏の部分でおでこを何度も突きました。

 痛みと恐怖と悲しみで混乱しながらも、同級生が見ている前での恥ずかしさもあり、泣きじゃくりました。

 謝りながらも、言い忘れた事は悪いけれど、なぜこんな仕打ちやはずかしめを受けるのか理解できず困惑しました。

絶望のトンネル

 私が通っていたミッションスクールでは、授業を通して、人間の罪について学ぶ機会がありました。

 けれども、いじめられる側にも罪があると理解していたため、「いじめられる自分にも、何か悪いところがあるのではないか」と受け止めていました。なんとか溶け込もうと懸命でした。

 しかし、上手くいかず、ますます孤立してしまうように感じました。毎日が、絶望のトンネルをさまよっているようでした。

 担任教師にも相談をしたことがありましたが、「チクった」といわれ状況が悪化したため、それ以上相談することはしませんでした。

 それでも、自分の性格に欠陥があるのならば直したいと思いました。

 直せば状況はきっと改善するだろうと考え、小学5年生の終わり頃、一人の同級生に、私を避けたりいじめる生徒たちが、私の何を嫌っているのか、どこを改善したらよいのかをたずねてもらいました。

 しかし、その答は「全部」というものでした。

「死」という文字が頭に浮かぶ

 「全部」という答えを聞いた瞬間、目の前が真っ暗になり、冷や汗が出て膝から力が抜けるような、そして、体の芯から震えがくるような、なんとも形容しがたい感覚が体を支配しました。

「性格なら努力でなんとかできる。でも、見た目も含めて全部だなんて、もうだめだ…」

 自分は価値のない人間だと感じ、「死」と言う文字が頭に浮かびました。

 学校へ行くことができず、休んだこともありました。

 母親に学校で何かあったのかたずねられても、「何もない」と答えるのが精いっぱいでした。

 いじめを親に知られたくなくて、無理して登校しました。クラスメートから「登校拒否じゃないかと思った」といわれ、「そんなんじゃないよ。お腹が痛かっただけ」と笑ってごまかしました。

 死を思いとどまったのは、死ぬことへの恐怖と、両親を悲しませたくないという思いからでした。

親への想いと心の葛藤

 私の中には、幼い頃、両親に大切に世話をしてもらっていた温かな感覚が残っています。

 思い出すたび温かい感情がよみがえり、私の身体的問題が原因で口論を繰り返していた両親を、絶対に悲しませてはならないと思ってきました。

 そのため、両親には学校でのいじめについてほとんど話しませんでした。ただでさえ、私の障がいは両親を悩ませ、家庭内の緊張を生んでいたのです。

 ましてや、障がいがあってもいじめられたりしないだろうと、親心から選んでくれた学校なのですから、とても話すことができませんでした。

 ただ私は、そんな重苦しい家庭の空気が嫌でたまりませんでした。

 表面上は強く振る舞っていましたが、内心では底なし沼のような悲しみにさいなまれ、時折、耐えられなくなってカンシャクを起こしてしまうこともありました。

 学校から帰ると、夕飯までの間、しばしば布団に突っ伏して泣いていました。

 両親が言い争う姿を見たくなかったですし、悲しませたくありませんでした。

 しかし、学校に行くことは怖くて、不安でいっぱいでした。

 何もしてくれないように感じた先生方や、同級生に絶望と怒りもあり、これらの複雑な感情は、徐々に「いじめた奴らを見返してやる!」というエネルギーへと変化していきました。

後悔と救い

 苦しい毎日を送ることで、怒りや悲しみや恐怖といった負の感情が渦巻き、気がつくと、自分よりも弱いと思う相手にキツくあたったり、意地悪い言葉がけをして、自分の苦しみの吐け口にしていました。

 本当はそんな彼らと友達になりたかったのです。

 でも、他の同級生の目を気にして素直に行動できませんでした。

 それでも、クラスは別でも2、3人話をしたり、いっしょに遊ぶ機会を持てた同級生がいて、そのことは私にとって大きな救いとなりました。

 次回は、継続する孤独感の記憶と、音楽への情熱、そして身体障害や学習障害への葛藤を超えて、念願の大学入学へと物語は続きます。

第4話はこちら

記事の一覧はこちら

※寺町新聞では、このほかにも数多くの連載記事を掲載しています。各連載記事はこちらからご覧いただけます。

(感想、メッセージは下のコメント欄から。みなさまからの書き込みが、作者エンジェル恵津子さんのエネルギーとなります。よろしくお願いします。by寺町新聞編集室)

連載記事 逆境のエンジェル

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この記事を書いた人

エンジェル 恵津子のアバター エンジェル 恵津子

アメリカで音楽療法の仕事に携わりながら、異文化、人との出会い、心の問題、社会などをテーマに執筆。日々の経験や感じたことを、心理学や仏教の教えと重ねながら、「逆境のエンジェル」「カルチャーブリッジ」などで綴っている。歌、折り紙、スヌーピー、和スイーツが好き。

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コメント

コメント一覧 (4件)

  • Zちゃん より:
    2024年2月5日 9:03 PM

     恵津子さんに出会う前の私の知らない恵津子さんの過去が真摯に書かれた第三話、読む前も後も変わらず恵津子さんの強さを感じたよ。

     偶然ですが、私も小学三年生のときの担任の先生にはかなり。。だったので、同じ歳の私たちはそれぞれに悪い時期を共にしてたんだなあと。

    次回も読ませてもらうよ!いつもありがとう。

    返信
    • エンジェル 恵津子 より:
      2024年2月6日 10:34 AM

      Zちゃんさん

      コメントありがとうございます。確かに、物心ついた時から、気は強いままですね(笑)
      Zちゃんさんも、辛い経験が小学校3年生の時にあったとは。同じ時期に似たような経験をした事は感慨深いですね。

      これからもよろしくお願いします!

      返信
  • さとるちゃん より:
    2024年2月6日 8:38 PM

    恵津子さん

    初めまして
    なんだか、不思議な気持ちをいただけました。
    強くて、でも暖かくて…。
    ありがとうございます。

    私も音楽好きです♩
    高校〜大学がミッション系でした。
    そんなところにも少し親近感…。

    次回も楽しみにしております。

    返信
    • エンジェル 恵津子 より:
      2024年2月8日 2:14 PM

      さとるちゃんさん、はじめまして!

      投稿をお読みいただき、コメントもありがとうございます。
      同じようにミッション系の学校にいっていた時期があったとのこと、共通する経験があるかもしれませんね。

      「強くて、暖かい」ありがとうございます。いつでも、そうである女性目指します!

      今後ともよろしくお願いいたします!

      返信

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