連載記事

逆境のエンジェル(第3話)子ども時代の苦悩②

前回のあらすじ

 結婚生活を通じてよみがえった筆者の子ども時代のトラウマから、幼少期にさかのぼり、学校でのいじめや、筆者の身体障害が原因で口論する両親の姿、そのような状況下での心理的変化をお話します。(第2話『子ども時代の苦悩1』はこちらからご覧ください)

なぜこんな仕打ちを受けるの?

 小学3年生のある日、昼に母が迎えに来る予定を担任に伝え忘れていたことがありました。給食を食べていると、同級生に母が迎えに来ていることを知らされました。

 言い忘れていた罪悪感と、恥ずかしさにさいなまれながら、教室で一緒に食事をしていた担任のところへ行き、母が迎えにきていることと、伝え忘れていたことを謝りました。

 すると、担任教師は私を叱りながら、何度も何度もボールペンの裏の部分でおでこを突いてきたのです。

 痛みと恐怖と悲しみで混乱しながらも、同級生が見ている前での恥ずかしさもあり、泣きじゃくりました。

 謝りながらも、言い忘れた事は悪いけれど、なぜこんな仕打ちやはずかしめを受けるのか理解できず困惑しました。

絶望のトンネル

 私が通っていたのはカトリック系のミッションスクールで、聖書には「人は生まれながらにして罪人である」という言葉があります。

 いじめられる側にも罪があるという教えを受けていたので、私も自分が悪いのかと思い、なんとか溶け込もうと懸命でした。しかし、上手くいかず、ますます孤立してしまうように感じました。毎日が、絶望のトンネルをさまよっているようでした。

 担任教師にも相談をしたことがありましたが、「チクった」といわれ状況が悪化したため、それ以上相談することはしませんでした。

 それでも、自分の性格に欠陥があるのならば直したいと思いました。直せば状況はきっと改善するだろうと考え、小学5年生の終わり頃、一人の同級生に、私を避けたりいじめる生徒たちが、私の何を嫌っているのか、どこを改善したらよいのかをたずねてもらいました。

 しかし、その答は「全部」というものでした。

「死」という文字が頭に浮かぶ

 この言葉を聞いたとき、「全部だって、どうしよう…」と、目の前が真っ暗になり、冷や汗が出て膝から力が抜けるような、そして、体の芯から震えがくるような、なんとも形容しがたい感覚が体を支配しました。

「性格なら努力でなんとかできる。でも、見た目も含めて全部だなんて、もうだめだ…」

 そう思った瞬間、自分は価値のない人間だと感じ、「死」と言う文字が頭に浮かびました。「自殺したらどうなるだろうか?」という考えが何度も頭をよぎり、学校を休んだこともありました。

 母親に学校で何かあったのかたずねられても、「何もない」と答えるのが精いっぱいでした。

 いじめを親に知られたくなくて、無理して学校に戻ると、クラスメートから「登校拒否じゃないかとみんなでいってた」といわれ、「そんなんじゃないよ。お腹が痛かっただけ」と笑ってごまかし、苦しみに耐えていました。

 自殺を思いとどまったのは、死への恐怖と、親を悲しませたくないという思いからでした。

親への想いと心の葛藤

 私の記憶に、乳幼児期、両親が私のオムツを替える様子が残っています。思い出すたび温かい感情がよみがえり、私の身体的問題が原因で口論を繰り返していた両親を、絶対に悲しませてはならないと思ってきました。

 それゆえ、両親には学校でのいじめについてほとんど話しませんでした。ただでさえ、私の障害は両親を悩ませ、家庭内の緊張を生んでいたのです。

 ましてや、ミッション系の学校なら、障害があってもいじめられたりしないだろうと、親心から選んでくれた学校なのですから、とても話すことができませんでした。

 ただ私は、そんな重苦しい家庭の空気が嫌でたまりませんでした。表面上は強く振る舞っていましたが、内心では底なし沼のような悲しみにさいなまれ、時折、耐えられなくなってカンシャクを起こしてしまうこともありました。

 学校から帰ると、夕飯までの間、しばしば布団に突っ伏して泣いていました。両親が喧嘩する姿を見たくなかったですし、悲しませたくありませんでした。

 しかし、学校に行くことは怖くて、不安でいっぱいでした。何もしてくれないように感じた先生方や、同級生に絶望と怒りもあり、これらの複雑な感情は、徐々に「いじめた奴らを見返してやる!」というエネルギーへと変化していきました。

後悔と救い

 苦しい毎日を送ることで、怒りや悲しみや恐怖といった負の感情が渦巻き、気がつくと、自分よりも弱いと思う相手にキツくあたったり、意地悪い言葉がけをして、自分の苦しみの吐け口にしていました。

 本当はそんな彼らと友達になりたかったのです。

 でも、他の同級生の目を気にして素直に行動できませんでした。それでも、クラスは別でも2、3人話をしたり、いっしょに遊ぶ機会を持てた同級生がいて、そのことは私にとって大きな救いとなりました。

 次回は、継続する孤独感の記憶と、音楽への情熱、そして身体障害や学習障害への葛藤を超えて、念願の大学入学へと物語は続きます。

第4話はこちら

感想、メッセージは下のコメント欄から。みなさまからの書き込みが、作者エンジェル恵津子さんのエネルギーとなります。よろしくお願いします。by寺町新聞編集室

ABOUT ME
エンジェル 恵津子
東京都出身。音大卒業後イギリスに渡り、現在はアメリカのカリフォルニア州立病院で音楽療法士として勤務。和太鼓を用いたセラピーは職員、患者共に好評。厳しい環境下で自分に何ができるのか模索しながら、慈悲深く知恵のある人を目指して邁進中。 歌、折り紙、スヌーピーとスイーツが大好き。
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POSTED COMMENT

  1. Zちゃん より:

     恵津子さんに出会う前の私の知らない恵津子さんの過去が真摯に書かれた第三話、読む前も後も変わらず恵津子さんの強さを感じたよ。

     偶然ですが、私も小学三年生のときの担任の先生にはかなり。。だったので、同じ歳の私たちはそれぞれに悪い時期を共にしてたんだなあと。

    次回も読ませてもらうよ!いつもありがとう。

    • エンジェル 恵津子 より:

      Zちゃんさん

      コメントありがとうございます。確かに、物心ついた時から、気は強いままですね(笑)
      Zちゃんさんも、辛い経験が小学校3年生の時にあったとは。同じ時期に似たような経験をした事は感慨深いですね。

      これからもよろしくお願いします!

  2. さとるちゃん より:

    恵津子さん

    初めまして
    なんだか、不思議な気持ちをいただけました。
    強くて、でも暖かくて…。
    ありがとうございます。

    私も音楽好きです♩
    高校〜大学がミッション系でした。
    そんなところにも少し親近感…。

    次回も楽しみにしております。

    • エンジェル 恵津子 より:

      さとるちゃんさん、はじめまして!

      投稿をお読みいただき、コメントもありがとうございます。
      同じようにミッション系の学校にいっていた時期があったとのこと、共通する経験があるかもしれませんね。

      「強くて、暖かい」ありがとうございます。いつでも、そうである女性目指します!

      今後ともよろしくお願いいたします!

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