連載記事

逆境のエンジェル(第1話)連載にあたって

アメリカ16年目の探究と、新たなはじまり

 私は現在、アメリカのカリフォルニア州で生活しています。こちらでの16年間の経験や生まれてから今までの人生を振り返ると、多くの挑戦と学びをもたらしてくれた事に気づきます。今回は、その経験を寺町新聞の読者の皆さんと分かち合う機会をいただき、心から感謝しています。第一回目の今日は、自己紹介をかねて、この連載を始めた背景と、私が直面した問題についてお話しします。

大愚和尚との出会い

 2023年1月に、「乱れた感情の整え方」と題した大愚和尚のYouTubeの一問一答に出会い、目からウロコが落ちるようで、衝撃を受けました。お話しを聞く前は、どんな宗教臭い胡散臭い話がでてくるのかと、少々偏見をもって、身構えて動画を再生しました。しかし、その内容がとても現実的で腑に落ち、非常に科学的だと感じ、これは本物だと思いました。それから毎日無我夢中で多くの動画を視聴しました。

 いままで、読んで感銘を受けた著者の講演会に参加したり、動画を観たりしてきました。しかし、書かれている内容と実際の言動にギャップを感じ、懐疑心が芽生え、最終的に遠ざかってしまいました。

 一方で、大愚和尚は違って映りました。ご自身の言動や葛藤に真摯に向きあい、仏教の教えに基づいて修行し、お話しする姿勢に感銘を受けました。一問一答を聴きながら少しずつ仏教の考え方に触れ、地に足がきちんとついたように感じ、これこそが真理であると思ったのです。

心理学と仏教のつながり

 私は仕事柄、心理学のスキルを用いて対象者と関わっていますので、仏教の考え方の一部は知識として身についています。例えば、「弁証法的行動療法(Directical Behavioral Theraoy) は仏教の考え方が基になっています。その中のMindfulness"のスキルは、仏教の坐禅や瞑想が基になっており、”Radical Acceptance”のスキルは仏教の「受容」の考え方が基盤になっているのです。

 そして、昔から仏教には惹かれるものがありました。慈悲心や、チベット仏教の「砂絵の曼荼羅」の儀式に象徴される、諸行無常にはとても感銘を受けていました。人間の執着(欲望)が苦しみの源であるという考え方には、いつも救われる思いがしていました。

 そのような経緯を経て一問一答の動画に出会い、とても感動し、ロサンゼルスでの大愚道場と一問即答に参加させていただいたのです。

人種差別と向きあう日々

 私の悩みは、現在でも根強く残るアメリカの人種差別の問題についてでした。夫がアフリカ系アメリカ人であり、彼が日々遭遇する人種差別に対して、妻として上手に寄り添うことができずにいることに心苦しく思っていました。

 また、州立の司法精神病院で勤務しながら、人種による不平等な刑罰を受けているマイノリティの現状を目の当たりにしていました。セラピストとして何ができるのか、彼らとどのように関わり、適切な言葉掛けをしたら良いのか悩んでいました。それに加えて、私がマイノリティの日本人で身体障がい者である事から、間接的であったり直接的に受ける人種差別にも心疲れていました。それでも随所に顔を出す自己承認欲求によって、いつも戦っているように感じていたのです。

戸惑いと覚悟

 そこで、どのように心穏やかに関わればよいか、アドバイスをいただきたかったのです。感情が昂って泣きながら話す私の言葉に、大愚和尚は涙ながらに静かに対話してくださいました。その時にいただいたアドバイスは、私の仏性は「歴史を勉強し、私の経験と思いを本に書くこと」でした。文章を書く事が苦手だと思っていただけに、事前に提出した相談内容で、そのように感じていただいた事は驚きでした。少々戸惑いながらも嬉しくもあり、「はい!書かせていただきます!」と答えました。

 そして、ナーランダ出版社の廣瀬社長より「逆境のエンジェル」と物語のシリーズを命名いただき、様々なご指導をいただいて、この度寺町新聞にシリーズで投稿させていただく運びとなったのです。

差別問題への思い

 大愚道場の中で話された、「生、老、病、死や自然災害に遭うなどの、自然の摂理によってもたらされる苦しみは変えられない。これらを受容することが苦しみから遠ざかることになる。しかし、いじめ、人種差別や戦争などの人間の作り出す苦しみは変えられる可能性がある。」とのお話に感銘を受けました。

 差別やいじめはまさしく私たち人間が作ったものです。ならば書くことを通して、私にも何かできることがあるかもしれないと思わせていただいたのです。

 私自身が身体障がい者であり、上手く人間関係を作れなかったことも災いして、子供時代にいじめられた経験があります。さらに、黒人の夫との出会いとアメリカ生活で日々直面する人種差別の問題に悩み、学びを深めて何かをしなければならないと感じたのです。

連載にあたって

 過去の辛い経験を振り返れば、思い出すだけで苦しい瞬間もあります。しかし一方で、アップルの創始者のスティーブ・ジョブズ氏が語ったように、『人生は全てが点と点で繋がっている』。無駄な経験は無いという信念があり、なんとかここまでの人生を歩んできたと感じています。

 この連載をとおして、私自身の人生経験としてだけでなく、私たち一人一人がどのようにしてより良い社会を築いていけるか、新たな発見や学びの場になれば幸いです。

 次回は、子供時代のいじめとその苦悩についてお話しし、それが私の人生にどのような影響を与えたかについて物語が進んでいきます。次の連載をお楽しみに。

第2話はこちら

感想、メッセージは下のコメント欄から。皆様からの書き込みが、作者エンジェル恵津子さんのエネルギーとなります。よろしくお願いします。by寺町新聞編集室

ABOUT ME
エンジェル 恵津子
東京都出身。音大卒業後イギリスに渡り、現在はアメリカのカリフォルニア州立病院で音楽療法士として勤務。和太鼓を用いたセラピーは職員、患者共に好評。厳しい環境下で自分に何ができるのか模索しながら、慈悲深く知恵のある人を目指して邁進中。 歌、折り紙、スヌーピーとスイーツが大好き。
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POSTED COMMENT

  1. たかちゃん より:

    エンジェル恵津子さん、はじめまして!
    恵津子さんの素敵な連載のスタートを知り、とても嬉しくワクワクしております!

    ロサンゼルスでの大愚和尚様とのやりとりや、大愚和尚様のお話もこうしてご紹介下さり、その場に参加できなかった私にも新たな気づきがあり有難いです。とても優しい空間だったことだろうと想像しただけでも幸せな気持ちになりました。

    恵津子さんの大切なお話やお気持ちを、このようにシェアして下さりありがとうございます。次回の記事も今から楽しみにしていますね!

    • エンジェル 恵津子 より:

      たかちゃんさん、はじめまして。
      第1話をお読みいただき、コメントをありがとうございます。

      ロサンゼルスでの大愚和尚さまとの対話は、本当に感動的でした。今思い返しても胸が熱くなります。
      私の人生の物語をシェアさせて頂くことで、少しでもお役に立てれば幸いです。

      今後ともよろしくお願い致します!

  2. まどんか より:

    エンジェル恵津子様

    逆境のエンジェル(第一話)を読ませて頂きました。過去の辛い経験を書こうと決意され、私達に学びの場を提供してくだりありがとうございます。とても勇気のいる行動だと思います。
    連載を読ませていただくのを楽しみに待っています。

    • エンジェル 恵津子 より:

      まどかさん、こんにちは。

      お読みいただき、コメントをありがとうございます。
      世の中には、私の経験などよりももっと辛い経験をされている方も多くいらっしゃいますが、少しでも、この物語がお役に立てば幸いです。

      引き続きよろしくお願い致します。

  3. エルちゃん より:

    エンジェル恵津子さんへ。
    こんにち。昨年のアキバ大祭の時に、何処から参加したのかで、シールを貼る時に、お会いしてます。
    私が石垣島からですとお伝えすると、遠い所から…と労をねぎらってくださいました。
    それで私が、どちらからお越しですか?と聞くと…サラッとアメリカからですとの事、私よりも遥かにとーい所からお越しなのに。
    相手の方に、労をねぎらってくださるとは!と思っていました。
    今回、ストーリーを拝読させていただきました。
    生まれた所ではない、周りに知人、親戚が誰も居ない状況での生活、疎外感や不安感、エンジェル恵津子さんとのスケールは違いますが、私も理解できます。日本で一番端の島、与那国島に一人で降り立ち、全く知らない所で頼れるのは自分自身のみ、言葉も違い、生活習慣も違う所での暮らし…でも、私等の暮らしとは遥かにスケールが違うと思います。ストーリーをを読ませて頂きとても、勇気を頂きました。
    エンジェル恵津子さん、ありがとうございます。美龍香水

    • エンジェル 恵津子 より:

      エルちゃん(美龍香水)さん、こんにちは。

      お読みいただきまして、コメントもありがとうございます。また、あきば大祭ではお世話になりました。

      覚えていますよ!日本地図の端の島を指されてその距離に驚きました!私は日本に帰省中だった事もあり、エルちゃんさんよりは日本国内の移動は短かったので、遠いところをお越し頂いてと思いました。

      住み慣れた場所を離れてお一人でその島に降り立たれた背景、そしてそこでの経験など、色々とあられたのだろうと想像します。今度機会があればそのようなお話も是非聞かせて下さい。

  4. ロイター ゆみ より:

    恵津子さんはじめまして!

    人種差別、犯罪、精神病院、思わず目を逸らしてしまいたくなるようなテーマだと思いますが、笑顔で楽器を手にされている恵津子さんのお写真を拝見し、ご自身で目の当たりにしてこられた体験、続きのお話しを是非お伺いしたい!と感じました。

    発信してくださって、ありがとうございます
    楽しみにしております。

    • エンジェル 恵津子 より:

      ロイターゆみさん、はじめまして。

      第1話をお読みいただきまして、コメントもありがとうございます。
      テーマは決して読みやすい内容ではありませんが、複雑に絡み合っているこれらの問題を少しでも分かち合えたら幸いです。

      次回からしばらくは私の生い立ちが中心になります。その後、これらの問題を一つ一つ丁寧に取り上げていきますので、引き続きよろしくお願い致します。

  5. さとし より:

    前回のアキバ大祭でお会いしてました。今後の連載楽しみにしております。

    • エンジェル 恵津子 より:

      さとしさん

      お読みいただき、コメントもありがとうございます。
      あきば大祭でお会いしていたのですね!その節はお世話になりました。
      引き続きよろしくお願い致します。

  6. 光洋 より:

    エンジェル 恵津子さん、初めまして。
    光洋と申します。

    お話拝読させて頂きました。
    まずは貴重な恵津子さんのご経験を共有してくださってありがとうございました。

    やはりアメリカには根深い人種差別の問題があるのですね。
    私は海外に出たことがありませんので、恵津子さんが発信してくださることを通して、
    連載の目的とされている「より良い社会を築いて行くために私に何ができるか」
    学ばせて頂きたいと思います。
    とても楽しみにしています。

    そして大愚和尚から頂いたアドバイス、とても素敵ですね!
    廣瀬社長が命名された物語のタイトルを見ても、恵津子さんのお人柄が見えるようです。
    応援しています!

    光洋拝

    • エンジェル 恵津子 より:

      光洋さん、はじめまして。

      投稿をお読みいただき、コメントもありがとうございます。

      人種差別は先進国であれば、どこの国でも見られるものですが、アメリカには、独特の環境があるように見受けられます。私も、まだまだ勉強中で知らないことばかりですが、少しでもお役に立てれば幸いです。

      このような機会を大愚和尚様と廣瀬社長にいただいたことは、本当にありがたい事だと思っています。これに驕る事なく、謙虚に丁寧に連載を重ねていきたいと思います。

      よろしくお願いいたします。

  7. より:

    エンジェル 恵津子さん、
    はじめまして!
    たかちゃんサンより素敵な連載がスタートしたとのお知らせをいただいて、一気に読ませていただきました。

    障害のことや、旦那様のこと、イジメや人種差別の経験・・・
    でも、恵津子さんの文章から悲壮感や刺々しさはなくて、とても不思議に思っています。
    そんな経験をされているのなぜ?点と点を知りたい。
    そして、ABOUT MEのお写真の笑顔や好みから絶対キュートな方だって確信しています!
    連載、楽しみにしています。

    • エンジェル 恵津子 より:

      晶さん、はじめまして。

      投稿をお読みくださり、コメントもありがとうございます。

      連載を通して点と点を感じていただけたら嬉しいです。
      プロフィールについてのコメントもありがとうございます。慈悲深い人、知恵のある人に、もう一つ、「キュート」を付け加えて邁進いたします!(笑)

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