2023年8月27日(日)。東京駅にほど近い“AP東京八重洲”にて「経営マンダラ実践会・第0期」が開催されました。5月はロサンゼルスにて開かれましたが、日本では初となるこの日。約60名の参加者が、全国各地から集いました。
経営マンダラとは、世界一“永く”続く組織である仏教教団と、世界一長寿な日本企業の「性質と秘訣」を、大愚和尚の視点でまとめたものです。この永続経営に欠かせない9つの要素を学び、改善し、実践することで、会社の繁栄と自身の成長を目指す「経営者の学び舎」。
その内容は、単なる知識の理解に留まらず、円満な人間関係や資産の構築、マネジメントなど、あらゆるテーマにおける「実践」が行われます。そして実際の経営に活かせる知恵を、ワーク等も交えて体得する学び場です。
あなたは決断できますか?
開始から数分後。大愚和尚は参加者に呼びかけます。「どなたか数名、前に出てご協力いただけませんか」。すると、8名の男女が前に進み、突然のワークが始まりました。
この“ワーク”は場を和ませる演出や、ただのゲームといった事ではなく、その後の講義に繋がる、重要な布石となっていました。
誰しも人生は選択の連続です。まして経営者となれば、得たいもの全てを選ぶことは出来ず、限られた情報から何かを選んで、何かを切り捨てる、シビアな決断を迫られます。
その事実を言葉だけでなく、会場の全員が目で見て、肌身で体感するためのワーク。このように日本初の経営マンダラ実践会は、誰もが思いもよらない形で、スタートして行きました。
『静と動』の実践会、始動
ここから、また別のワークや休憩も含めて約3時間。大愚和尚の講義は、国や企業の運営といった大きな話から、子育てや家庭環境など、小さな単位にも及びました。一見、2つはまったく別のテーマにも思えます。
しかしリーダーの人間関係は、その心理に大きく作用し、重大な決断に影響。ひいては大勢の命運をも、左右するという話に繋がっていました。
参加者の皆さんも、つねに真剣に聞き入り「ひとつも聞き逃したくない」といった熱意が、肌身で感じられました。
また折に触れて全員への問いかけもあり、威勢よく「それは〇〇!」と席からお答えになる方も。そうかと思えば不意に、ウィットに富んだユーモアや、“経営あるある”といったお話が飛びだし、会場が笑いに包まれます。一方向の話が続くのではなく、様々な“静”と“動”が入り交じる講義となりました。
大愚和尚の誓願
講義の後には、参加者のお悩みや質問に答える“一問即答”の時間も、設けられました。そして最後、実践会はこの先どう展開して行くのか、そもそも何をきっかけに、どのように組み立てられたのか。その根幹の部分について、大愚和尚の考えや想いが語られました。
これまで福厳寺では、新たな試みが次々と開始されてきました。直近ではテンプルステイ、大愚道場、佛心僧学院、内弟子道場・・などなど。
それらは一見、別個のプロジェクトのようですが、実は経営マンダラも含めた、すべてが繋がっていた。つまり、大愚和尚の元には「構想の設計図」があり、今の形が作られていた事実が明かされました。
大愚和尚は言います。
いま日本は大変なことだらけです。ですが、国が悪いとか、政治が良く無いとか嘆いていても現状は変わりません。それならば何か一つ、自分たちで、小さく行動を起こそうではありませんか!
経営者の方にはぜひ、お金のために我慢して行う仕事ではなく、「この仕事が面白いんだ!」「この仕事が必要なんだ!」と思える事業を、どんどん作って広めていってほしいのです。
経営マンダラ参加者のお声
この日は、実践会の前後や休憩時間など、参加者同士で名刺交換や、お話をされている光景を、多数お見かけしました。このように横の繋がりも広がって行くのが、経営マンダラの大きな特徴です。
そうした中、貴重なお話を伺えた3名のお声をご紹介したいと思います。
【明照保育園・副園長 静永彩さん】
「きょうは滋賀県より、ぜひお話を聞きたいと思い、やって参りました。私の場合は“ビジネスで収益を上げたい”という立場ではありません。
でも職員間のチームづくりが、何より重要になる職場です。お仕事に臨む心構えや、何よりは子どもたちのために。園を代表して大切なエッセンスを、持ち帰りたいと思っています。大愚和尚がどのようなお話をされ、どのような会になって行くのか、今から楽しみです。」
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福厳寺には、先代の和尚様が創設された太陽幼稚園があり、大愚和尚ご自身も長年、お仕事に携わっていました。講義の中でも、その経験に基づいた学びや、子どもたちへの教育と、会社における従業員の成長は通じているというお話も、ありました。
また経営マンダラの内容は、一つの事業や地域に限定されるものではありません。 静永さんの学びや気付きも、職員の方々を始め、これから社会を築いて行く園児の皆さんにも、きっと巡るのではないでしょうか。
この日も沢山のヒントを得て、持ち帰られたのではないかと思います。
【会社員(茨城県) 鈴木勝人さん】
「私はいま、会社員として頑張らせて頂いているのですが、ゆくゆくは、とある事業を起こす構想を抱いています。ただ一方で、自分に経営なんて本当に出来るのか。従業員と信頼を築く、立派なリーダーになれるのかと。じつは大きな壁を、感じてもいます。
そうした中、この場では実際の経営者の方に、リアルなお話を聞くことが出来るので、この環境は本当にうれしいですね。
冒頭、とつぜんのワークが始まったときは正直、驚いてしまいましたが。ここでは、ただ机上の勉強でなく、体感としての学びが沢山あるような気がします。
知識でなく、カラダに刻まれる感じでしょうか。まだ気は早いのですけど、今のハードルを超えられる自分になれるのではと、そんな予感を抱き始めています。」
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実践会には社長や政治家、法人の役員や従業員、そして“これから起業を構想している”人も含め、多種多様な方がいらっしゃっていました。
講義の冒頭では、もともと経営とは仏教用語であり、お経に書かれている真理の“縦糸”に、創意工夫の営みである“横糸”を組み合わせ、丈夫にして行くものと、お話がありました。
そして、まさにこの実践会も、お釈迦様の教えを“縦”軸としますが、そこに参加者同士“横”のつながりが加わり、強固となって行きます。だからこそ鈴木さんの、このような期待や安心感にも繋がったのではないかと、感じられました。
【学校法人上田佐藤学園・副校長 比田井(ひだい)和孝さん】
「とくに後半ですかね、お話を聞いていて私、すごくワクワクして来ました。これはすごいことになる!これは面白いことになるぞ!と。
1人の参加者、1つの会社だけの話ではないのですよ。皆さんが、これからどんどん結びついて、ゆくゆくは日本だけじゃなく世界レベルでと、そういうお話もあったじゃないですか。
大愚和尚は、こんな事までお考えだったのかと。事前に思い描いていた内容を、はるかに超えていました。これから実践会で、何が生まれるでしょうか。本当に楽しみです!」
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目を輝かしながら、身振り手振りも交えて、語って下さった比田井さん。同じ場に居た者として“ワクワクする”というお気持ちは、とても共感する思いでした。
前半は現状をしっかり見据えるため、いま日本社会や経営者が抱える、シビアな現状のお話もありました。
しかし、それを嘆いて終わりでなく「それならこうしましょう」「こんなことも出来ますよ」と、知恵や提案に結びついて行くのが、経営マンダラです。悩みの解消を超え、先々への希望を感じた方は、他にも大勢いらっしゃったのではないかと思います。
編集後記
日ごろ私たちは様々なニュースを見聞きし、ネガティブな気持ちになる事も、少なくありません。そして「社会が良くなって欲しい」とは思っても、「では具体的に、どうしたら良いのか?」という考えまでは、ほとんど辿り着きません。
大愚和尚は折に触れて、世の中へメッセージを発信されています。しかし、そこからさらに「だから、このようにします」という構想があり、今まさにそれを、有言実行されているのだと、肌身に感じました。
この先も是非、さらに共感する多くの人々が集い、寺町構想がますます彩り豊かになっていく未来を、願ってやみません。
原田ゆきひろ