こんにちは、寺町編集室の原田です。
昨年、ぼくは経営マンダラを取材させて頂き、強く心に残ったひとつに“日本の潜在能力”についてのお話がありました。
米中の発展などとは裏腹に、経済の不調が叫ばれることも多い日本ですが、会社の事業において最も大切な“持続力”は突出しており、創業年数が長い企業数ランキングにおいては、今なおダントツの世界1位。
また脈々と受け継がれてきた職人文化や技術力、とくに江戸時代に形成された独創力は群を抜いており、そうした特性を多くの経営者が活かせたならば、大きな飛躍の希望があると、大愚和尚は語られました。
そのお話を耳にしたとき、ぼくは数年前に目の当たりにした、とある驚愕の“興行”を思い出しました。
それは幕末に作られた仕掛け人形だったのですが、まだご存知ない方はぜひ、一生に一度“動いている”ところを見て頂きたい思いです。
通称“からくり儀右衛門(ぎえもん)”と呼ばれていた職人が作り、忘れ去られていた作品の数々。
それらを現代の職人が補修、あるいは設計図をもとに再現し、東京の両国でお披露目したもので、その動きは人知を超えたものでした。
①【文字書き人形】
まげを結い、座布団に正座した男性の人形。卓上の硯(本物の墨入り)に筆をひたしていますが、稼働すると眼前の紙にスラスラ。その後、観客へ向けられた紙には『松』の一文字。ここまですべてが自動です。
そして背後で職人が何かを操作し、同じ人形が再び書くと、今度は字形がまるで異なる『寿』の文字。もちろん電力はいっさい使わず、歯車や糸などアナログを使用しています。
あまりの不思議さに、ふつうの見世物であれば「すごいですね」と拍手するところ、ぼくは「えっ……」と人形を凝視したまま、固まってしまいました。
②【甲冑(かっちゅう)弓引き人形】
弓を手にした武者人形が、矢筒から矢をとり弓の弦にかけ、4メートルほど先の的にビュン!
惜しくも外れて、観客からは「ああ」というため息。しかし、これは演出でした。職人が何かを操作して矢を放つと、今度は的にブスッ!
「ワーオ、アメイジング!」うしろで海外の方が叫びましたが、まったく同じ気持ちでした。
現代にあっても、これほどの驚きです。まして幕末の人々なら「妖術か」「こりゃ、どうなってやがるんでい」などと、度肝を抜かれたでしょうか。
なお“からくり儀右衛門”は類まれな才能の持ち主でしたが、当時は彼と競うような職人もいたといい、江戸時代の計り知れない技術力に、仰天の思いでした。自国の伝統だからと持ち上げるのではなく、ひいき目無しにしても、本当に世界で類まれです。
ぼく自身もこの日本について、まだまだ知らない事ばかりだと思いました。
これからも日本の伝統に加え、現代の新しい創造も含め、様々な探求を重ねていきたい思いです。そして、そこで感じた驚きや発見を、ぜひ多くの方にお伝えしていきたいと感じています。
文字書き人形の実演(神奈川新聞・公式YouTube)は、こちら
(※再生すると音声が流れますので、ご注意ください。)
達筆ですばらしいです。
そうですね。これが“からくり”によるものという事実に心底、驚かされてしまいました。