チャンネル登録者数50万人突破記念シリーズ第三弾。
大愚和尚へ直撃インタビュー「どんなスタッフとともに『一問一答』を作りたいですか?」ーー今回は、大愚和尚がどんな「人」とともに制作活動をしたいとお考えかを聞いてみました。
●今こそ聴きたい!大愚和尚の一問一答
・vol.1「なぜ『処方箋』なのですか?」
・vol.2「大愚和尚はYouTubeをどのように活用されていますか?」
一に「誠意」、二に「能力」
Q:どんなスタッフとともに『一問一答』を作りたいですか?
私が一緒に仕事をしたいなと思えるのは、誠意がある人、そして能力がある人です。この両方の要素を持つことが大事だと思っています。
というのも、私はすべてのことを「一人で100パーセントやりきる」ということをしません。7割ほど自分で仕上げて、あとは誰かに「お願いします」と任せています。
これは、私がかつてお師匠様からそうやって育てられたからです。むしろお師匠様からは、7割どころか、たった1割ほどで渡されることもありました。とにかくその残りを一生懸命埋めることによって、能力が伸びるのですよね。
と格好いいことをいいましたが、要は私はいい加減な人間なのです。よって私の残りを処理する「能力」がある人が結果的に残るということですね。それが不満でここを去った方もいらっしゃいます。
けれども、過去にこんなことがありました。この福厳寺の境内にある「太陽幼稚園」の40周年で改築した際に、過去に働いていた先生方にもお集まりいただき、現役の先生たちとお話をしてもらったのです。
その時に、「太陽幼稚園の仕事はきついでしょう?でもね、ここを出たらどこへ行っても通用するから、だからここで踏ん張りなさい。」と先輩の先生方がお話していました。
私はここで育っていますので当たり前に思いますが、「厳しいけれど、ここを出ればどこに行っても通用する」。福厳寺は、まさにそういう環境なのだと思います。
誠意は引き際に、能力は見極める力が鍵
Q:「誠意」や「能力」のある人を見極めるポイントはありますか?
人の誠意は「関係ができる時」ではなく、「関係が終わる時」にこそ表れます。だから見極めるのが難しい。まずは相手を信じるしかありませんね。
ただ、長くかかるものではなく、少しの間だけ時を共にすればわかります。例えば初対面の相手だと、誰もがいい格好をしますよね。しかし、その人とともに過ごした帰り際には、言葉一つ、所作一つからその人の本性が現れます。
「立つ鳥跡を濁さず」といいますが、引き際が美しくある人こそ、誠意のある人だと思います。
一方、人の能力は見ていればわかります。スケート選手ならスケーティングを見る、野球の選手であれば投げる・打つ様子を見ればわかります。
それらから、自分が求めている基準値よりも高いレベルで能力を持っている人、もしくは能力が伸びる可能性のある人を選ぶわけです。そうなると、むしろこちら側に「見極められる力」が必要になってくるということです。
「自信がない」といえるのも能力
ところであなたは、自分に自信がありますか?自信の有無は、何か基準があるわけではありません。
たとえば、修行僧の一人である大勇さんは、早稲田大学のご出身。誰もが素晴らしいと評し、私といえば逆立ちしても入れなかった大学です。でも、本人からすれば、自分は素晴らしいと思わない。だから苦しいのです。
私たちは幼い頃から「教師が持っている答えを探せ」といわんばかりの教育を受けて育ってきました。だから、答えがないものにチャレンジするのはものすごく苦手なのです。そして、自信がないのです。
ところが現代社会では、「自分はできるんだ」と自らに言い聞かせる思考がいいと評されます。でも、果たしてそうでしょうか。自らにいいきかせるだけで、結局は失敗してしまう人が多いような気がします。つまり、「自信がない」と言えるのは素晴らしい能力なのです。
自信がないから、チャレンジする
おおげさかもしれませんが、私はこの50年間で、一日たりとも「自信があった」という日はありません。自分を信じていないのです。それは一問一答を撮影する時も、講演会の時も同じです。
それは、泳ぎきれるかどうかわからないプールや海に飛び込むようなもの。毎度「なんとかたどり着いたね」と弟子とともに安堵するような状態です。自信がないから、チャレンジし続けるのです。
10年、15年と一緒に過ごしている弟子は、最初は「どうなってしまうのだろう」と心配が尽きなかったようですが、この頃は「どうにかなるだろう」と思っているようです。
しかし、弟子に結論がわかってしまうようでは、これまたつまらないですよね。それは私がチャレンジせずにさぼっているということでもあります。弟子が息をつけないくらいの展開を考えるというのが、私がチャレンジする一つのバロメーターといえるかもしれません。
メンタルではなくフィジカルを信じる
自分のマインドに「できるか?」と尋ねたら、やはり不安です。メンタルは信じられないけれど、なんとか50歳まで厚かましくも生きてこられたという事実だけはあります。
その事実だけを頼りに、どんな新しい球が飛んできてもとりあえずは受けてみて、「できなかったらごめんなさいね」と、もはや怒られることも覚悟の上で生きています。これは自分のフィジカル(身体的能力)を信じているということです。
だからこそ、周りのスタッフは「誠意と能力」のある人がいいですし、より私は安心してチャレンジできるので、結果的に良いものを生み出せるのではないかと考えます。
取材を終えて
「あなたは自信がありますか?」と問われた私は、思わず口ごもってしまいました。私も漏れなく「自信はある」と自らに言い聞かせてきた、自信のない人間だからです。けれども、「私として生きてきたという事実を信じる」というお話を聞き、すっかり肩の荷が下りました。
今回改めて、大愚和尚の真の魅力について考えました。
それは、大愚和尚がYouTubeで有名であることでもなく、由緒正しいお寺の住職でありながら、経営者としても活躍していることでもない。「チャレンジする勇気を持つ人であるところ」ではないでしょうか。
そして「誠意と能力」を兼ね備えた人々がその精神にすっかり魅了され、自分もスタッフになりたいと、大愚和尚の元に自然と吸い寄せられていくのだろうと思います。
桐嶋つづる