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鼓動と共に歩む〜Turn Awareness into Action⓶〜(第51話)

2025 6/08
連載記事 逆境のエンジェル
2025年6月9日

➤逆境のエンジェルとは

 アメリカで暮らす筆者が、いじめ、身体障がい、音楽への情熱、異文化での生活、人種差別、仏教との出会いを通じて成長していく物語。個人的な体験を超え、社会の不平等や共生の課題にも鋭く斬り込み、逆境のなかで希望を見出す力を描きます。

➤前回のあらすじ

 アメリカでは、5月を「メンタルヘルス月間」としています。それを受けて、その意味やメンタルヘルスについて語っています。

目次

効果絶大! 孔雀も参加する!?熱烈応援団

 今回は前回の記事に続き、5月の「Mental Health Awareness Month(メンタルヘルス月間)」について、職場での試みから考えてみたいと思います。

 アメリカでは毎年5月を「メンタルヘルス月間」に定め、心の健康の重要性について理解を深めたり、精神疾患に対する偏見をなくすための取り組みが行われています。

 私の職場でもこの月に合わせ、例年「Mental Health Run(メンタルヘルスラン)」が開催されます。

 これは、昼休みを延長して、5キロまたは10キロを走る、あるいは歩くというもの。参加者は病院のゲートからスタートし、自然公園に抜ける道を、大きな池の前や木々の間をぬけ、鳥の声、ときに野生の鹿や七面鳥に遭遇しながら、同僚たちと談笑したり、自分のランニングタイムの記録に挑戦したりしています。

 このイベントで、私はスタッフ太鼓チームのリーダーとして、応援演奏を担当しています。走る人、歩く人にリズムと声援を送る、それが私にできる「行動(Action)」のひとつです。

 イベント中、参加者たちは、リズムに合わせて踊り出したり、私たちの演奏をスマートフォンで録画したり。そして全員が満面の笑みを浮かべ、手を振りながら走り去っていきます。

 どの人も太鼓の音が響くたび、表情が明るくなっていく。世界一大きくて、大きな音の出る楽器・和太鼓だからこそ可能な、独特の応援団。その効果は絶大のようです。

 こうしたイベントに、これまではスタッフだけが参加していました。それが今年初めて、患者が参加できる日程も組み込まれることに。そしてそれは、心と身体の健康について改めて考える、絶好の機会となりました。

 初めて参加した患者たちは、戸惑いもあったのでしょう。多くはただただ静かに歩いていました。

 それが、太鼓の前に来た途端、足を止め、少しだけ体を揺らしたり、照れくさそうに微笑みながら手拍子を打ったり。太鼓の音に勢いづいたのか、最後は力を振り絞って走り込む姿も見られました。

 「遠くから聞こえる太鼓の音に、がんばれって背中を押してもらっているように感じたよ」とは、患者の伴走をしていた同僚。普段はあまり音楽療法士をほめない彼からの言葉に、私たちの表情にも思わず笑みがこぼれました。

 身体を使い、音を浴び、表情がほぐれていく…。薬物や心理療法だけでなく、そんなごくごく小さな、一瞬一瞬の幸福感や達成感の積み重ねも、治療の一端を担えるのだと、この日、そう強く感じることができました。

 ちなみに、このイベントに参加したのは、患者やスタッフだけではありません。構内にいる孔雀たちも、鳴き声で声援を送ってくれました!

 これは、私が作曲した『孔雀』という太鼓の曲を演奏している間のハプニング。まるで、この曲に合わせるかのように、声高に響く孔雀の大合唱。

 絶妙のタイミングに、思わず「自分たちの曲だって知ってるのね〜!」と皆で大笑い。そんなユーモアと感動の交差するひとときを、演奏する側の私たちも十分に味わうことができました。

黒人や有色人種に、なぜ、うつが多いのか

 精神科の現場で日々感じることのひとつは、黒人や有色人種の患者に、深刻なうつ症状が多く見られるという現実です。

 その背景には、単に「個人の心の問題」ではすまされない、社会構造や歴史の重さがあります。

 人種的偏見、教育・就労機会の格差、警察との関係、貧困、世代を超えて引き継がれるトラウマ──。彼らが日常的にさらされているストレスの大きさは、異文化を生きる私自身の胸に大きく迫ってきます。

 「強くなければ生きていけない」といわれ続けて育った人は、自分の心の傷に気づかないふりをするようになります。そして、誰にも頼らずに耐えることが「当たり前」になってしまう。

 それは、自分の苦しみにさえ、耳をふさがなければならない文化的プレッシャーでもあります。

 支援を求めることが「弱さ」と受け止められる社会のなかで、「助けて」といえるようになるには、並大抵の勇気では足りません。

音と身体、そして回復のリズム

 だからこそ、私は「音」や「身体の動き」が、言葉にならない感情の扉を開くきっかけになるのではないかと信じています。

 太鼓のリズムに合わせて、ほんの少し体を揺らすだけでもいい。それは「私はここにいる」と、自分の存在を感じる行為。誰にも見えなかった心の殻が、ほんの少しだけ開く瞬間なのかもしれません。

 今年の「Mental Health Run」は、その意味で、「共に走ること」「共に音を感じること」が、私たちを対等な存在として結びつける場になっていたように感じました。

 私たちが太鼓を打ち鳴らしながら見つめていたのは、走る人の姿だけではありません。走ることができなくても、立ち止まって耳を傾けるその人の「いまここにいる」という存在感。そこに、確かな“Action”が宿っていたように思うのです。

心を動かすために、まず体を動かす

 人は、心だけでは立ち直れないときがあります。

 そんなとき、言葉が出てこないときには、体を動かすことから始めてみる。リズムに乗って歩いてみる。少しだけ、誰かと同じ空間で呼吸を合わせてみる。

 そんな小さな「身体の行為」が、心をそっと支える柱になる。それを、私は現場で、そして自分自身の経験を通して、学んできました。 

 今年の「Mental Health Month」のテーマである“Turn Awareness into Action”。その行動は、大げさなものではありません。

 走る、歩く、音を鳴らす、手を振る──。そんな日常の延長にある一歩が、沈黙のなかの誰かを励まし、癒す力になるのだと思います。

 これからも私は、太鼓を打ちながら、その鼓動に耳をすませていきたい。

 そして、「声にならない声」が少しでも届くように、私自身もまた、耳を澄ませていようと思います。

 次回の投稿のテーマは、カリフォルニア州のある小さな町の歴史や文化をご紹介します。(更新は6月23日夜7時)

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(感想、メッセージは下のコメント欄から。みなさまからの書き込みが、作者エンジェル恵津子さんのエネルギーとなります。よろしくお願いします。by寺町新聞編集室)

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この記事を書いた人

エンジェル 恵津子のアバター エンジェル 恵津子

東京都出身。音大卒業後イギリスに渡り、現在はアメリカのカリフォルニア州立病院で音楽療法士として勤務。和太鼓を用いたセラピーは職員、患者共に好評。厳しい環境下で自分に何ができるのか模索しながら、慈悲深く知恵のある人を目指して邁進中。
歌、折り紙、スヌーピーとスイーツが大好き。

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