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 発売を前に作者たちが語り合う 『三人の笑う法師』って、こんな絵本!

『三人の笑う法師』は、笑い続けることで人々に教えを説いた三人のお坊さんのお話。中国に伝わるこの物語を、作家の天野瀬捺さんとイラストレーターのやながわともよさんが再構築した絵本が、このほどナーランダ出版から発売されます。リリースに先駆け、寺町新聞をご覧の皆さんにいち早く作品を知っていただこうと、このたびお二人をインタビュー。作品の魅力がさらに広がる、そんな素敵なお話をたくさん伺いました。

Profile

天野瀬捺(あまの せな)
千葉県出身。外資系航空会社元CA。作家、通訳。世界30ヵ国以上を旅し、オーストラリア、スイス、カナダには長期滞在。日本国内では沖縄に2年余り在住経験あり。海外に出たからこそ再認識した日本の凄さ、素晴らしさを世界に発信したいと活動中。現在はカナダ在住。著書に『世界が憧れた日本人の生き方』(Discover21)。
やながわともよ
愛知県出身。京都市立芸術大学 美術学部美術科油画専攻を卒業。2010年よりフリーのイラストレーターとして活動。広告物全般、出版物、web、パッケージ、絵本の挿絵などのイラスト制作に携わる。おもに人の暮らしや自然との関わり、動植物などのイラストを描く。2012年に絵本『インディアンの森』(森田誠二・作 亥辰舎刊)の絵を担当。現在は長野県在住。二児の父。

廣瀬知哲(ひろせ ちてつ)
福厳寺僧侶、ナーランダ出版社長、寺町新聞編集長。
大愚和尚が掲げる「寺町構想」の推進補佐・広報全般を担当。

Interview

Q:この絵本が生まれたきっかけを教えてください。

●天野 私がこの物語を知ったのは、コロナ禍の真っ只中の2021年春。ロックダウン中にYouTubeのおすすめに上がってきたんです。世相的に笑うことが難しい時期だっただけに強く惹かれました。英語の動画だったので日本でも紹介されているのか調べたところ、日本語版はなく…。ならば私が翻訳して、日本の皆さんに紹介しようと思い立ったのが始まりです。

■やながわ 最初は2021年7月発行の福厳寺の季刊誌『慈光』に紹介されたんですよね。そうしたら、読者の反響がすごくよかった!

●天野 おかげさまで。で、1回の記事で終わらせるのはもったいないと思い、『慈光』を発行されているナーランダ出版の廣瀬さんに、このお話を本にしませんかと提案させていただいたら、じゃあ絵本にしようということになって。

■やながわ そして私にもお声がかかったわけですね。

●天野 挿絵の候補は何人かいらしたようですが、作品を拝見して、私はやながわさんの作風が、とっても優しくて柔らかくて、このお話の世界観にぴったりだって思いました。

■やながわ 私は高校生の頃に絵本に出会い、その頃から絵本を作る仕事に関わりたいという思いがありました。でも敷居が高くて、なかなか踏み込むことができなかった。福厳寺とはホームページのイラストを担当させていただいたご縁もありましたが、私を指名していただき本当に感激しています。

Q:作品づくりはどのように進められたのですか?

●天野 キックオフは2022年の4月で、廣瀬さんが絵本づくりをプロジェクト化してくださり、zoomで初めて三人の顔合わせをしました。やながわさんには、最初にお目にかかった時、透明感のある方だな、という印象がありました。以来、月1ペースでzoomでミーティングを行い、私はカナダ在住なので、時差を調整しながら進めていきました。

■やながわ 毎回、事前に天野さんが原稿を送ってくださり、それに私がラフスケッチを起こしミーティングに臨む、という流れでしたね。天野さんの第一印象は、芯が強そうな方。また、笑顔がとても素敵だと思いました。

●天野 やながわさんは私が意図したことをしっかり汲んでくださり、いつもイメージ通りに仕上げてくださる。阿吽の呼吸のようなところがありました。

■やながわ 仏教に精通しているわけではないのに、すんなりと入ってこれた。何かに導かれた、そんな気持ちがしています。

Q:作品づくりで大切にしたこと、こだわったポイントは?

●天野 三人の法師を中心に据えて、笑いの渦が伝播していく場面がありますが、あのシーンがすごく大事だと思っていて。天に向かってみんなが笑っている。その笑いの波及効果をいかに表現するかに一番こだわり、最初のミーティングから、やながわさんに強くお願いしました。でも、言葉でイメージを伝えるのって難しいですね。やながわさんも苦労されたんじゃないかな。

■やながわ 全編を通してですが、苦労した点がほとんどなくて。波及シーンについても天野さんのご意向がすぐ理解でき、パッと描くことができました。

●天野 ラフの段階から手応えがありましたが、着色されたら予想を超えた仕上がりに。本当にうれしかったです。

■やながわ あと「三」という数字にもこだわりましたね。この作品は私と天野さんだけでない、調整役の廣瀬さんの存在あってこそできたものです。

●天野 全くです。「三人寄れば文殊の知恵」と言いますしね。私とやながわさんと廣瀬さんがいて、三人のうち誰が欠けてもこの作品は成立できなかった。廣瀬さんは大きな存在で、支えられている安心感がありました。

■やながわ 廣瀬さんから「信頼している二人のアーティストにお任せしています」と言っていただいたのがうれしかったですね。あと、「三」は“魂と精神と肉体”を表すとも言われていますが、三人が揃ってこそパーフェクトになると感じました。

●天野 一人だと不可能なことが、二人だとできる、三人だともっとできる。違った能力が集まったときに、そこから生まれるものの凄さ。このシナジーも私が大切にしたことですが、今回の作品づくりではすごく実感できました。

Q:作品のテーマ「笑い」についてどのように思われますか?

●天野 笑いの効果には計り知れないものがありますよね。ただ、ここでの法師たちの笑いは、俗世間の笑いとは次元が違う上品(じょうぼん)の笑い。三人の法師は村々を遊行しながら、笑いを通して高い波動のエネルギーを放ち、人々を潜在意識レベルから底上げしていくかのよう。本人は自覚しないのに、笑うことで正しい方向に向かわされるような。

■やながわ 三人の法師は確かに次元の高い存在。でもそれは私たちに内在しているものだとも思うんです。村人たちの笑いも、三人が起こしたというより、自分のたちの中にあったものが引き出されたという感じがします。

●天野 それは同感! 法師たちとシンクロした笑いですよね。

■やながわ そもそも私は笑うことが苦手な人間で(笑)。でも、だから笑いを客観的に見つめ、絵に生かすことができた。クライマックスの花火のシーンの後の人々の笑顔は、我ながら会心の出来。私でなきゃ描けなかったという自負があります。

Q:この絵本を手にとる方へメッセージをお願いします。

●天野 笑いというものは人から押し付けられるものではないですが、この絵本を読んで、笑うことの尊さを再認識していただけたらうれしいですね。

■やながわ コロナ禍ではマスクで互いの表情が読み取れない状況が続いてきました。この作品を通じ、コミュニケーションツールとしての笑顔について見直すきっかけにもなればと願っています。

Q:お二人の今後の抱負や予定をお聞かせください。

●天野 私は“これは手をかけたらよくなるかも”と、ポテンシャルを見つけて何かを生み出すような作業が好き。次は昔アメリカに住んでいた祖父の古いアルバムに光を当てたいと思っています。1930年代に祖父がロサンゼルスからニューヨークまでオンボロ車で大陸横断旅行をしているんです。その時に撮影した写真が相当あるのですが、どれも歴史的価値を感じさせてくれるものばかり。これを後世に残せるよう形にしていきたいです。

■やながわ 今回『三人の笑い法師』の絵本づくりに携われて本当に幸せでした。この経験を糧に、絵本づくりに本腰を入れていきたいと思います。


「ものを生き返らせるのが好き」という天野さん。外でストーブにくべられるはずだった切り株も、持ち帰って磨いて磨き抜いて、世界に一つだけの素敵なオブジェに再生。「この上に飾る花を見ると幸せな気分!」
イモ版画を多く手がけられる、やながわさん。使うのはサツマイモとジャガイモで、水分によって雰囲気が変わります。イモの形を生かして図柄をイメージします(写真は「鳥と少年」)。

取材を終えて

・発売日:2023年5月7日 
・価格:3500円(税込・送料込)
・購入はコチラから⇒ ナーランダ出版オンラインストア(5月7日以降可)

作品づくりの終盤には、二人で文章の一語一句を細かく見直したという、天野さんとやながわさん。大和言葉を意識し、熟語はなるべく開いて柔らかい日本語を使うことを心がけたといいます。議論に議論を重ねながら緻密に作り上げられた作品の、その舞台裏のお話からは、ものづくりのプロとしての気概と矜持が伝わってきました。

満を持して発売される『三人の笑う法師』。法師たちの上品の笑顔は、私たちの心をきっと、数えきれない「福」で満たしてくれることでしょう。

                                    杉井 千美

                         

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