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分断を超えて、心をつなぐ(第39話)

2025 5/16
連載記事 逆境のエンジェル
2024年11月4日2025年5月16日

➤逆境のエンジェルとは

「逆境のエンジェル」とは、アメリカで生活する著者が、自らの人生をふり返り、いじめや身体障がい、音楽への情熱、音楽療法士としての歩み、異文化での生活、異文化間結婚、人種差別など、さまざまな体験・挑戦を通じて得た気づきと学び、成長をつづった物語です。

➤前回のあらすじ

 アメリカで体験したコロナ禍での生活。そして、そこで直面した過酷なコロナ病棟勤務。そこでの気づきについて語っています。(第38話「コロナ禍の試練を超えて」はこちらからご覧ください)

目次

コロナ禍で浮き彫りになったタブーとは

 コロナ禍での経験について、もうひとつお話ししたいと思います。

 この文章がみなさんの目に触れる頃、アメリカでは大統領選挙の結果が出ているかもしれません。

 私の心は、その結果に対する不安と期待に揺れ動いています。

 世界中の多くの人々もまた、この選挙を見守り、その行方に注目していることでしょう。

 どちらの候補者が当選したとしても、その結果が世界に与える影響は計り知れません。

 2016年にトランプ氏が大統領に当選して以来、アメリカ社会の根底に潜む問題に直面させられるようになったと感じています。

 いままでタブーとされていたけれども、この国の根底にある人種差別の問題が浮き彫りになったのです。

 多くの人が人種差別や社会的な不平等といった現実を、直視せざるを得なくなりました。

 彼の就任は、いやが応でも多くの問題を表面化させ、人々の目を開かせたといえるのではないでしょうか。

 私自身はトランプ氏の支持者ではありませんが、彼の就任がきっかけとなり、隠されていた偏見や差別が浮き彫りになったことには、一種の感謝を感じます。

 私たちはこの混乱のなかで、新たな意識に目覚め、社会の在り方について、考え直すきっかけを得たのではないかと考えるからです。

 この大きな変化のさなか、追い打ちをかけるようにコロナパンデミックが襲いました。

 このウイルスは私たちの日常を根底から揺るがし、多くの人々が経済的困難に直面しました。

 しかし、家に閉じこもる時間が増えたことで、人々は改めて自分や社会の在り方を見つめ直し、見えなかった「無意識の差別」や社会の分断について、考える時間が生まれたのではないかと思うのです。

 私はアメリカにいながら、オンラインを通じて日本や世界各地の友人たちと再会したり、ふだんは交差することのない著名なミュージシャンとの交流の機会も得ました。

 ときには彼らと深い話をすることもありました。この期間が実際に心の交流を広げ、大変な状況のなかでも、私たちは支え合って生きているんだと、実感することができました。

心に羽が生える‼️プロジェクトがスタート

 このような状況のなかで、私の職場では、大きなプロジェクトが立ち上がりました。

 名づけて「Unbound Heart(アンバウンド ハート)」プロジェクト。直訳すると「束縛されない心」という意味を持つ言葉です。

 それは、パンデミックという、誰も経験していなかった状況下でこそ生まれた取り組み。

 テーマとなったのは「共存の大切さ」であり、特に、誰からも見過ごされ、忘れられている人々に焦点を当てることで、メンタルヘルスの認識を高めたいとの目的がありました。

 その背後には、人種や経済的格差で分断された、アメリカや世界情勢に対する憂いもあったであろうと想像します。

 このプロジェクトは、地元のアーティストであるトレイシー・フェロンさんの協力により実現しました。

 彼女の兄のボブさんは、幼少期に統合失調症を患って、カリフォルニアの州立病院で過ごしたのだそうです。その経験から考えついたのが、「鳥かごと羽の生えたハート」のアイデアでした。

 鳥かごのなかの羽を持つハートのモチーフは、孤独やトラウマによって、身動きが取れなくなった状態を象徴したもの。それは本人だけでなく、家族や周囲の人間も含まれます。

 さらに、このプロジェクトの意義深い点は、希望と解放を表現した「羽の生えたハート」を、紙などの身近な素材を用いて、地域のコミュニティと協力しながらつくり上げていくプロセスにあります。

 私の所属するリハビリテーション課が中心となって進めたこの企画には、病院側の賛同が得られ、多額の予算を組んでもらうことができました。

 共同で制作される公共のアート。私たちの社会にあるさまざまな分断や対立に対し、新しくて力強く、想像力豊かで治療効果も期待できる、大がかりなプロジェクトの始まりです!

 木の根元部分にあしらわれた、黒いドロドロとしたマグマのようなもの。これはトラウマに見立てたもので、鳥かごに閉じ込められたハートは、内なる葛藤と解放へのあこがれを表現しています(下記の写真をご参照)。

 そして、癒されることで鳥かごから解放され、自由に飛び立っていく姿。

 トラウマを癒し、その呪縛から解放され 自己受容をしながら自由になっていく…、そのプロセスが、そこにありました。

 下記のショートビデオでは、プロジェクトの過程とその全貌をご覧いただけます。 

鳥かごから放たれた、言葉で伝えられない痛み

 このプロジェクトには、病院の患者やスタッフ、地元ボランティアなど、総勢1,500人以上が参加。およそ800個のハートがつくられ、病院内のホールに展示されました。

 紙で模型をつくることに徹した患者。ペインティングが好きな患者。アートにはイマイチ興味が湧かないけれど、動きと音楽でこのプロセスと感動を表現することに集中した患者。そして、プロジェクトの写真撮影として参加した患者…。

 患者それぞれの適正や興味に合わせた、多種多様のスキルと熱意の、まさに集大成です。

 私も、羽の生えたハートの一部をペイントしたり、ハートを心臓、太鼓の音を鼓動と表現した患者の言葉を受け、患者らとともに和太鼓演奏を行いました。

 スクリーンの後ろで太鼓を叩く患者を、スクリーンの外から心を合わせながら、一緒に叩いて指揮をとる。

 こうした経験を通して、心の傷が少しずつ癒えていくのを感じ、自己受容につなげていくことができた…。そんなことを、患者はもちろん、多くのボランティアのメンバーも感じてくれたようです。

 ある患者は、自分の踊っている姿を動画で見て、「わぁ、私、とても幸せそう!」と笑顔で語り、またある患者は、黒いドロドロとした塊(かたまり)を見て、「私は一生、この黒い泥のなかにいると思っていました」と、鳥かごから流れ出る黒い樹脂を指さしました。

 彼女はその鳥かごが、自分が病院に連れてこられたできごとの象徴だと感じると、話してくれました。

 それが、治療を受けたことで、自分を受け入れ、自己成長する方法を身につけることができ、いまでは自身を、自由に飛び立つ明るいハートのひとつだと、感じることができるようになったといいます。

音楽が持つ癒しの力を実感

 この大変な時期に、音楽やアートの力を通じて、皆で協力することの尊さと美しさ。

 さらに、トラウマや無意識の偏見を考えるきっかけができたことは、私を大いに励ましてくれました。

 音楽療法士の同僚が行ったヒップホップや、歌をつくるグループでは、患者たちが自身の過去や苦しみを歌詞にしました。

 そして、地域コミュニティのボランティアやスタッフにコーラスを録音してもらい、最終バージョンにミックスするという形で、音楽作品を完成させました。

 「言葉では伝えられない痛みが、リズムやビートによって少しずつ解放されていく」と語る患者の姿は印象的で、音楽が持つ癒しの力を改めて実感することができました。

 その作品については、下記の動画よりご覧ください。歌詞は患者がつくったもので、これには日本語訳もつけてあります(スクリーンの向こう側で、踊ったり太鼓を演奏しているのは患者のみなさんで、ふたりほどスタッフも入っています)。

支えあうことで、人は一歩を踏み出せる

 パンデミックという試練のなかで、人々が手を取り合って、互いの痛みや苦しみに向き合い、心を通わせる貴重な場を提供してくれた「Unbound Heart」プロジェクト。

 この時期、感染リスクを避けるために入退院の患者数を制限したため、通常業務では積み残しがちだった実務仕事にも集中でき、それによって時間的余裕ができたことも、このプロジェクトの実現にプラスに働いたと思っています。

 さまざまなバックグラウンドを持つ人々がともに活動するなかで、心のなかに生まれた新たな絆。

 このプロジェクトの準備段階から、参加者たちはそれぞれの心の傷や苦しみに向き合い、自分なりの方法でその思いを表現しました。

 ある患者は、日本の浮世絵に影響を受けたデザインを描いてくれました。そして、カラフルな模様を繊細な筆使いで描き、「これが自分の心です」と語っていました。

言葉で伝えられない感情を引き出す

さまざまな困難がありながらも、私がこの仕事を好きだと思う理由は、一般的なカウンセリングや心理療法に対し、アートや音楽を使ったセラピーは、一人ひとりが持つ創造性のなかから、言葉で伝えられない感情を引き出し、人々を癒していくことが可能だからです。

 患者の多くは、知的障害や精神病特有の症状によって、言葉で表現することが難しくなっています。だからこそ、言語表現のみにかたよらず、それぞれの能力や認知度に沿って自己表現のできるアートや音楽は、安全な治療手段のひとつであると考えます。   

 このプロジェクトは私にとっても、大きな学びとなりました。人は支え合うことで自分を見つめ直し、一歩前へ踏み出す力を取り戻せることを、身をもって感じたからです。

 患者やスタッフ、ボランティアが、ともに前を向き歩んでいく姿は、私にとって希望の光となり、「きっと社会は変わることができる!」という思いを、確信に変えてくれました。

 どんなに困難な状況でも、私たちは互いを支え合う気持ちさえあれば、必ず乗り越えることができる。このプロジェクトは、そのことを証明してくれたのです。

 大統領選を前に、再びこのビデオを見て、あのときの感動に胸を熱くしている、いま。「羽の生えたハート」は、また新たな課題を突きつけながら、次なる挑戦に立ち向かう勇気を私に与えてくれています。

>>Unboundのサイトはこちらから。https://lifeonart.org/unbound

 次回は、大統領選の結果が出たばかりのいま、もう一度アメリカの意図的な選挙戦略と、投票に関する問題を掘り下げてみたいと思います。

第40話はこちら

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(感想、メッセージは下のコメント欄から。みなさまからの書き込みが、作者エンジェル恵津子さんのエネルギーとなります。よろしくお願いします。by寺町新聞編集室)

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この記事を書いた人

エンジェル 恵津子のアバター エンジェル 恵津子

東京都出身。音大卒業後イギリスに渡り、現在はアメリカのカリフォルニア州立病院で音楽療法士として勤務。和太鼓を用いたセラピーは職員、患者共に好評。厳しい環境下で自分に何ができるのか模索しながら、慈悲深く知恵のある人を目指して邁進中。
歌、折り紙、スヌーピーとスイーツが大好き。

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