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「心に種をまく」音楽と折り紙がつなぐ気づきの瞬間(第37話)

2025 5/16
連載記事 逆境のエンジェル
2024年10月21日2025年5月16日

➤逆境のエンジェルとは

「逆境のエンジェル」とは、アメリカで生活する著者が、自らの人生をふり返り、いじめや身体障がい、音楽への情熱、音楽療法士としての歩み、異文化での生活、異文化間結婚、人種差別など、さまざまな体験・挑戦を通じて得た気づきと学び、成長をつづった物語です。

➤前回のあらすじ

 障がい者支援の視点からみる「無意識の偏見」について語っています。(第36話『「厳しさは一貫性」障がい者支援の難しさ』はこちらからご覧ください。

目次

音楽が心に触れる瞬間

 今回のテーマは、音楽と折り紙を通じて、これまで何度も語ってきた無意識の差別への気づきや、思いやりの気持ちを育むきっかけをつくる、セラピーの例について紹介したいと思います。

音楽療法の力

 音楽はときに言葉以上に心の奥深くに浸透する力があります。

 その特性を活かすことで、笑いに満ちた瞬間や、感動の涙を誘う瞬間を生み出すことができるのです。

 私が心がけているのは、「歌詞の意味を思い描きながら歌う」ということです。

 特に、深い意味を持つ歌詞では、弾き語りでその曲の物語を共有し、患者が自分自身の経験を重ね合わせることで、気づきのきっかけをつくることを目指しています。

折り紙を通じた五感へのアプローチ

 一方、折り紙は手の動きや色彩を通して五感に働きかけ、心の深い部分に触れる体験を提供します。

 折り紙を折る行為と音楽を組み合わせることは、感覚的な気づきと感情的な気づきを融合させ、自分のなかにある無意識の差別への気づきや、受容のプロセスを促します。

 私が勤務する病棟は、精神状態が非常に不安定な患者が最初に治療を受ける場所で、長期入院の病棟のように時間をかけて治療に携わることが難しい状況にあります。

 また、緊張感を持っていないと、危険を感じる患者に出会うことも少なくありません。

 まだ精神的に落ち着いていないため、関わり方によっては、暴力的になる可能性がある患者もいるからです。

グループセッションでの小さな種まき

 それでも、グループセッションに参加してくれる患者に対して、私ができるささやかなことがあります。それは、小さなひと粒の種をまくことです。

 その種が芽を出すかどうかはわかりません。それでも、受動的に話を聞くだけでなく、さまざまなアクティビティを通して、仏教でいう「六根」を刺激し、心の深い部分に働きかけることが可能だと考えています。

 そのひとつの方法として、患者と一緒に歌を歌い、その歌詞の意味を深く考えたり、歌詞を一部変更して彼ら独自の言葉を入れてもらったりします。

 これにより、感じ考え、自分の人生を追体験してもらうことを目的としています。

笑いを誘うセッション

 ある日のセッションでは、ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の劇中歌『私のお気に入り』を用いて、彼らのお気に入りを盛り込んだ、替え歌をつくるゲーム感覚の活動を行いました。

 最初に、「人生には辛いことがあって、泣きたいときもあるけれど、そんなときに自分の好きなことや大切な思い出に想いを馳せると、気持ちが少し楽になるかもしれない」と話し、何人かにお気に入りのものを挙げてもらいました。

 ある患者は「散歩すること」「家族に電話をすること」「好きなものを食べること」と答えてくれました。

 食べ物の話題になると一気に盛り上がり、「ピザが好き」「チーズバーガーが食べたい」と、まるで子どものように目を輝かせます。

 そして私にも、「あなたは何が好き?」と聞いてきたので、すかさず「もちろん、お寿司よ!」と答えると、「俺も寿司が好き! カリフォルニアロールと、サーモンが乗ってるやつ!」と話が弾み、にぎやかな雰囲気になりました。

 話を本題に戻そうと、「これで3つ出たから、最後の4つめは?」と尋ねると、ひとりの患者が少しいたずらっぽく、「そりゃあ、ポットだよ!」と答えました。

 みなが爆笑するなか、私が一瞬意味がわからず戸惑っていると、彼は「大麻だよ、大麻!」と教えてくれました。

 思わず苦笑しながら「せっかく真面目に考えてきたのに、大麻って…」と返すと、彼は「いいんだよ、嫌なことを忘れられるから!」とニヤニヤしながらいい、また一同大笑い。

 こうしてできあがった替え歌を、笑いながらみんなで歌いました。

🎵散歩に行くのが好きなのよ  

 家族と話すことが好きなのよ  

 ピザを食べて、ポットを吸って〜  

 これが私の好きなこと〜

 悲しくて苦しくて泣きたいときは  

 大切なものを思い出せば心が軽くな〜る🎶

 このような活動を通して患者たちは自分自身を表現し、他者と共有する喜びを感じます。

「無意識の差別」に気づくワークショップ

 昨年の夏に日本に帰省した際、母校の大学で、現役の学生に講義をする機会をいただきました。

 私の仕事の紹介から、州立精神病院での音楽療法の実践、ワークショップ、そして学生時代に専攻していた幼児教育との結びつきについて、話をさせていただきました。

 その際、私の経験談だけでなく、学生たちに人種差別に対しての質問もしました。

 質問の内容は、「人種によって優劣をつけている自分がいるかどうか(講義では黒人と白人という言葉を使いました)」「障害を持った人に対して優劣をつけている自分がいるかどうか」です。

 私が教室に入ってきて、学生の前に立ったときに、何を思ったかも記憶しておいてもらいました。

 学生たちが私を見たときに抱いた印象や感情、それは、これまでの環境や経験から形成された無意識の判断の表れだからです。

 そこには、彼ら自身も気づいていない、無意識の偏見が含まれている可能性があります。

 授業の最後にはもう一度、最初の印象について振り返ってもらい、自分のなかにある無意識の偏見に気づく機会をつくりました。

「愛」という言葉で想像するもの

 また、私たちのなかに潜む無意識の差別について、折り紙をきっかけとした歌で深く考えるワークショップも行いました。

 いつものように、折り紙でハートを折るところから始め、患者にもよくする質問を投げかけました。

 「ハートの意味って何ですか?」。

 すると当然のように、「愛」という答えが返ってきます。

 次に「愛って何ですか?」と尋ねると、恋愛を思い浮かべて恥ずかしそうに笑う人もいれば、「ロマンチックな愛」と、はにかみながらもうっとりとした表情で答える人もいます。

 そこで、「愛は恋愛だけではないですよね?」と問いかけ、「相手を思いやること」「大切にすること」といった答えを引き出します。

 この質問を職場の患者に尋ねたときには、「慈しみ(compassion)」という言葉が出てきたこともあります。

自分を愛するために必要なこと

 さらに「自分を愛していますか?」と質問すると、「愛している」と答える人もいれば、首を振る人もいます。

 ここで、自分を愛すること、つまり「受容」について考えてもらいます。

 親が自分の子どもを無条件に愛するように、しかし、その愛はただ何でも受け入れてよしとするわけではないこと。

 ときには、叱り、厳しい言葉や厳格な態度を示すことも大切であること。

 それでも、その子どもの自己成長を信じ、真剣に関わっていく。

 自己受容にも同じことが当てはまるのではないかと説明しました。

 自分のすべてを好きではないかもしれないけれど、そんな自分を受け入れ、自分の行動に責任を持ち、よりよい人間になれる可能性を信じて精一杯生きていく。

 それが「受容」ではないかと。

 折り上がったハートは、みなで見比べてもらい、何に気づくかも考えてもらいます。

 形は微妙に違えど、どのハートも美しい形をしていることに気づきます。これが私たち人間の姿そのものではないだろうか、と投げかけました。

 みなそれぞれ違っているけれど、とてもよく似ている。肌の色や環境が違っても、共通点がたくさんある。

 そのことに気づくと、優しい気持ちーー「慈悲」が生まれるのではないかと。

 この話をすると、多くの人が静かに耳を傾け、神妙な表情になります。

 ふだんのセッションでは、涙を流す患者もいます。

 そこで、歌を通じてその思いを共有します。

 職場では『We Are the World』や『Stand by Me』『Count on Me』などを歌いますが、日本の学生には中島みゆきさんの『糸』を選んで歌い、人とのつながりやハートをつくった意味​​も考えながら、感想や意見を述べてもらいました。

 そのときのセッションで歌った様子を、もしよろしければ下記のリンクからお聞きいただけると、少し様子を感じていただけるかと思います。

(個人情報保護のために学生は声のみです。また実際のセッションでは、対象者との距離はもっと近いのですが、これは授業形式のために、対象者との間には距離があります)。

 大切なのは、ライブで一緒に歌うことです。そうすることで一体感が生まれ、その意味がより深く心に刻まれるのです。

 ワークショップの終わりにとったアンケートで、何人かの学生は、「自分には差別という感情はないと思っていたが、質問されたときにドキッとした。自分のなかにも差別意識があることに気がついた」と書いてくれました。

 心の扉を開き、自分や他者を受け入れるきっかけをつくること。それが、私ができる小さな種まきだと思っています。

 そしてこれが、人種や環境が違っても、私たち人間には共通点が多いということに気づくきっかけとなり、その気づきが、無意識の差別を和らげる一歩となればと考えています。

 今回、出会った学生たちは、立派な社会人になって、きっと世のなかに貢献してくれるだろう…と、そんな希望を持つことができました。

 その手応えは、確かな原動力となって、今日も私の背中を押してくれています。

 次回は、アメリカでの生活。コロナ禍においてのコロナ病棟勤務。そして、そこでの気づきについて語っていきます。

第38話はこちら

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(感想、メッセージは下のコメント欄から。みなさまからの書き込みが、作者エンジェル恵津子さんのエネルギーとなります。よろしくお願いします。by寺町新聞編集室)

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この記事を書いた人

エンジェル 恵津子のアバター エンジェル 恵津子

東京都出身。音大卒業後イギリスに渡り、現在はアメリカのカリフォルニア州立病院で音楽療法士として勤務。和太鼓を用いたセラピーは職員、患者共に好評。厳しい環境下で自分に何ができるのか模索しながら、慈悲深く知恵のある人を目指して邁進中。
歌、折り紙、スヌーピーとスイーツが大好き。

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