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【名作アニメに見る仏教】『名探偵プリキュア!』から考える、ウソで覆われる世界

2026 9/19
アニメに見る仏教
2026年9月19日

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この記事は筆者の原田幸文(こうぶん) が、さまざまなマンガ・アニメの中に、仏教と重なる部分を見つけ、ご紹介するシリーズです。

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目次

大勢を魅了する探偵と怪盗の対決

僕は中学生の頃『怪人二十面相(かいじん・にじゅうめんそう)』という探偵小説シリーズにハマっていました。

きっかけは母方の実家にある、本好きの叔父の書斎でした。『怪人二十面相』シリーズの、全46巻が本棚にあったのです。叔父はすでに実家を出ており、訪ねると部屋に残された山ほどの本を、誰にも気兼ねなく読みふけることができました。

また本棚には活字本だけでなく、ドラゴンボールや北斗の拳といった、マンガの人気作もそろっていました。当時は現在のように、マンガ喫茶に当たるサービスもありません。子ども心に最高の場所で、まれに大人になった今でも、その部屋にいる夢を見ることがあります。

さて、二十面相はその名前の通り「二十の顔を持つ」と言われる、変装の達人にして、怪盗として描かれています。声色を変える技術も持ち、男女どちらにも成りすますことができるのです。

そしてターゲットを盗む前には、わざわざ「何月何日の〇時に、〇〇をいただきに行く」という予告書を出す、美学を持っています。

当然そんなことをすれば、警察を呼ばれて現場は厳戒態勢になります。ところが二十面相は人を出し抜く天才で、警備をまんまとすり抜け、宝石や美術品の盗みを成功させてしまうのです。

大胆不敵にして、超人的な実力をもつ怪盗で、とても常人では手に負えません。そんな二十面相を追うのが、名探偵の“明智小五郎(あけち・こごろう)”と、彼の助手である“小林少年”です。

怪盗と探偵側は互いを強烈にライバル視し、両者が知恵比べや駆け引きで火花を散らす展開には、ページをめくる手が止まりませんでした。

この小説『怪人二十面相』が、2026年に放映中のアニメ『名探偵プリキュア!』にオマージュされています。原作のファンとして「探偵物とプリキュアを、どう結びつけるのだろう?」と気になり、いくつかの回を視聴してみました。

すると随所にさまざまな発見や、現実世界の危機へとつながる点を感じ、ハッとさせられた部分がありました。その危機をどう防いでいけば良いのか、個人的に仏教の教えと結びついて、考えられた点もありました。

プリキュアと現実世界と仏教、この3つがどのように結びついたのか、ぜひお伝えしていきたいと思います。

精巧なウソを作りだせるAI技術

『名探偵プリキュア!』は第1話で、主人公の“明智あんな”が2027年から1999年にタイムスリップ。その時代で“小林みくる”という少女と出会い、2人は特別な力を持ったヒロインである、名探偵プリキュアに変身します。

そして困っている人々を助けつつ“世界をウソで覆いつくす”ことを目指している、怪盗団ファントムと対決するストーリーです。なお同作は『怪人二十面相』のみならず、シャーロックホームズや怪盗紳士ルパンなど、他のさまざまな探偵小説もオマージュされています。

さて、怪盗団ファントムの目的が達成されると、具体的に世界はどうなってしまうのでしょうか。この記事を書いている時点で、放映されているストーリーでは、あまり明らかにされていません。

※『名探偵プリキュア!・公式サイト』より引用
https://www.toei-anim.co.jp/tv/precure

ただ現実世界に目を向けた時、僕は“世界がウソで覆われる”が、本当になり得る可能性が高いと、危惧しています。その理由は、AIがとてつもない勢いで進化を続け、一部で技術の悪用が始まっているからです。

現在、僕は東京の街中を歩いていると『振り込め詐欺に注意』と書かれたポスターを、しばしば見かけます。警視庁のホームページを見ると、2025年には全国で3千億円以上の被害が、発表されています。(※投資詐欺やロマンス詐欺など、すべての詐欺カテゴリーによる被害額)

今の段階でも、これほどのレベルで被害が出ているのです。これから犯人側がさらに巧妙になれば、どうなるでしょうか。

すでにAIを駆使して他人の声をそっくりに作り、感情を乗せた演技もさせられる技術が、確立されていると言います。インターネットを介せば、そっくりな姿の映像も作れるそうです。まるで二十面相の変装さながらです。

加えて犯人は、過去のSNSやWEBサイトの情報などから、標的の情報を大量に入手できます。家族構成、誕生日、通学先や勤務先、肩書き、趣味、性格、考え方や話し方、好きな食べ物やレストラン。

先々はこれらを組み合わせ、あたかも本人のような人格を作ることも、出来てしまうと言われています。今まで手がかりにしていた「こんなに細かい事情を知っているなら、本人に違いない」が、通じなくなる恐れがあります。

海外に目を向けると2024年、英国にある大手企業の財務担当者が、ニセの社長による指示で、騙されてしまう事件も起きました。会社の資金である約40億円を、詐欺グループの口座に振り込んでしまったのです。

これは通称『アラップ事件』と呼ばれ、世界中に衝撃を与えました。個人だけでなく、組織の単位でも警戒するべき時代が、やってきてしまいました。

圧倒的に有利な犯人と不利な一般人

主人公がタイムスリップする『名探偵プリキュア!』では、しばしば時代の差によるネタも登場します。明智あんなが思わず「スマートフォンを使って・・」 などと口にして、周りから首を傾げられる場面もありました。

ひと昔前を考えると、インターネットが普及していない頃は、連絡手段が手紙や電話に限られていました。悪事を行う犯人が、雑誌や新聞の文字を切り貼りした手紙を作り、筆跡がバレない細工をすることも行われていました。

標的の情報も、組織単位でお金や労力を使って、入手する必要がありました。しかし、これからの時代は労力もかけずに出来てしまいます。今までよりリスクも少なく、仮に失敗してもAIで手法を練り直し、何度も仕掛けることが可能です。

それに対して、僕たち一般人が犯人を特定し、逮捕までつなげることは極めて困難です。反撃は難しく、ひたすら守り続けるしかないという、極めて不利な状況と言えるでしょう。

もし、大勢の人間が技術を悪用する側に回れば、世界は本当にウソで満ち溢れてしまいます。このような時代だからこそ、僕は仏教を精神の支柱にする重要性を、感じずにはいられません。

どのような背景からそう考えるのか、詳しくお伝えして行きたいと思います。

自分自身と大切な人を守るために

まず大前提として、どれほどAI技術が進化したとしても、それを悪用する人がいなければ被害は起きません。仏教を人生の指針にする人が、悪事に加担しないことはもちろん、社会に道徳心が広まれば犯罪は減ります。

加えて仏教には自身や周りを、偽りの情報から守る教えが、数多く含まれています。例えば詐欺は人々の欲や怒りにつけ込む手法が多く、そうした感情に捉われず、正しい決断をする『正思惟(しょうしゆい)』の教えです。

また物事を正しく見る『正見(しょうけん)』の教え、余計な情報を頭の外に出し、クリアな思考で目の前を見据える『めい想』も、正確な判断につながります。

加えて、普段から正しい言葉を使う『正語(しょうご)』の教えも、極めて重要になります。何者かが扇動や落とし入れのため、あなたに成りすまし、偽のメッセージを発信するかも知れないからです。

その際に、世の中から「いや、あの人がそんなことを言うはずがない」と、判断してもらわなければなりません。普段から過剰な批判や、荒っぽい言葉を多用していた場合、たとえ偽の発信でも「ああ、あの人ならいかにも言いそうだ」と思われてしまいます。

そうなると本人が必死で否定しても、世の中的に真実として通ってしまうと、ひっくり返すことが出来ません。

また『正語』は、無念にも騙されてしまった人に対し、どのような言葉をかけるかという点でも重要です。

僕は以前、高齢者福祉の相談員をしており、その際にオレオレ詐欺にかかってしまった、年配の男性と関わりました。

事件を聞いて駆けつけた被害者の娘さんは「ねえ、どうして確認しなかったの?こんな幼稚な手に騙されないでよ、お父さん!」と繰り返していました。僕は当事者ではありませんが、悔しさからそう口にしたい気持ちは、とても分かる気がしました。

ただ被害者のご本人は、もっと辛そうでした。父として、男としてのプライドが粉々になった様子で、ひたすら泣きそうな目をして、うつむいていました。

財産を奪われたショックに加え、さらに責められては、どれほどの悲しみか計り知れません。

これからの時代は誰もが騙される可能性があり、だからこそ被害者の心をどのようにケアするか、『正語』の大切さを感じずにはいられません。

あこがれの名探偵を目指す時代へ

「あなたも名探偵になりましょう!」。このように言うと、何だかプリキュアのキャッチコピーみたいです。しかし今からは、誰もが真に受けて考える必要を感じます。

AIで声や性格や姿を似せ、迫真の演技もさせられる犯人は、もはや伝説の怪盗に比肩する技術を手にしています。

ちなみに小説に登場する二十面相は独特の美学があり、ルパンは義賊の側面もあるなど、悪人の立ち位置ながら、どこか魅力があります。だからこそ怪盗でも、大勢の探偵小説ファンを惹きつけてきました。

しかし、現実の犯人は目的のために、手段を選びません。そのような難敵が、精巧なウソを仕掛けてくるのです。対して僕たちの隣には、明智小五郎や小林少年や、シャーロックホームズはいません。プリキュアも助けに来てはくれません。今こそ私たち1人1人が、真実を見極める目を得なければ、守り切れない時代です。

そして仏教的な表現で言えば、まっ暗闇で迷う大勢を灯りで照らす人が、何より必要とされます。

キャッチコピーではなく、ぜひあなた自身が名探偵になり、皆を守る存在になってください。

【コラム】偽者の知人を見破るには?
 デジタル技術が日進月歩の時代、かえってアナログの手法が役に立つケースがあります。それは大切な知人や家族と、本人確認の合言葉を決めておくことです。
 例えば1人が「春に咲く花は?」と聞いたら「モクレン」と答えるようにします。これがサクラやタンポポだと、何となく予想がついてしまいます。しかし春に咲く花の種類は数千種を超え、ありきたりな花でなければ、とても第三者は辿り着けません。
 このように、対象を絞れない言葉が望ましいです。他人がどれほど情報を収集しても、2人の間だけで交わされた、現実世界の言葉は調べようがありません。

アニメに見る仏教

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原田幸文(こうぶん)のアバター 原田幸文(こうぶん)

フリーライター、寺町新聞の執筆・取材を担当。小学生の秘密基地から南米のアマゾン川まで、どこへでも探訪。そこにある興味や発見、人の想いを、分かりやすい表現で書き綴るのがモットー。
■ Yahoo!ニュース・エキスパート 第11回MVA(Most Valuable Article)銅賞■ 本名は原田幸大(ゆきひろ)。2024年に大愚和尚から生前授戒を受け『幸文(こうぶん)』の名を授かる。

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