佛心大祭

【花まつり2024】生きとし生けるすべての命の祭典・後編

◆前記事のあらすじ

2024年4月27日(土)に福厳寺で行われた、花まつり。前回は「なぜ法話の直前に歌が流れたのか」という疑問に始まり、朝礼や法要で語られたお話や、お祭り全体の様子をお伝えしました。

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【FMTみまもり整体】痛いとき、辛いときのかけ込み寺

かつて大愚和尚は、交通事故や空手の怪我による後遺症を克服した経験から、FMT(※福厳寺メディカルトレーニングの略)整体院を創設しました。今では全国に6店舗が展開され、心身に様々なお悩みを抱える方が訪れています。

患者さんは整体院で施術を受けますが、なかには自宅から出られない事情をもつ方もおり、一部の地域ではセラピストが訪問して治療する〝みまもり整体〟も行われています。

この日は、その施術を体験できるスペースも設けられ、花まつりでは物理的な意味でも、心身ともに快調となって過ごされる来場者の姿が、見かけられました。

いったい、どのような施術が行われていたのでしょうか。来場者が途絶えたタイミングで、取材班の1人も体験させて頂くことができましたので、その様子をお伝えします。

 「動かすと、痛いところなどはありませんか?」

そうした声がけに始まり、仰向けになると顔にふわっとタオルがかけられ、施術がスタート。まずは右足、セラピストが包み込むように優しく触れると、膝を曲げてそのまま倒します。

そして、筋肉のほぐしが始まったのですが、その力は〝触れている〟と〝押している〟の中間ともいえるような、わずかな強さです。

正直なところ、最初は「え、これで効果があるのだろうか」と思いました。しかし両足から始まり、両肩にいたるまで終始、ゆっくりと優しい施術が進みます。セラピストの手がホッカイロのように温かく感じ、身体の内部もじんわりと血行が良くなり、不思議な温かさが広がりました。

そして施術が終わるとセラピストから、日常でのアドバイスもありました。「冷え性をお持ちのようですので、入浴の際には湯船にゆっくりと浸かって温まってください。また肩が〝巻き肩〟気味ですので、普段からストレッチを行うと良いですよ」。

施術の前に、問診などはいっさいありませんでした。それにも関わらず、もともと持っていた症状や身体の状態まで、ピタリと言い当てられてしまう不思議。触れた感覚や、動作を見ただけでそれらが分かるのでしょうか。

すべてが他では経験したことのない施術でありながら、どこか重かった体がふわりと軽くなっていたのです。この感覚は、ぜひ多くの方にも共有したいという気持ちになりました。

【花まつり2024】大愚和尚・特別法話会

午後15時すぎ、さまざまな催しでにぎわった花まつりも、終盤に近づいてきました。法話の時間が近づくと、本堂の前には会場に来ていたほとんどの方が集まります。

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ぼくらはみんな 生きている

生きているから 歌うんだ

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とつぜんスピーカーから流れる歌声に、聴衆が様々な反応を見せるなか、大愚和尚が本堂前に姿を現し、今年の特別法話会が始まりました。

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この先週末(2024年 4/27現在)、円安が155円の大台を突破しました。トレンドというものはいちど出来ると、そこに次々と乗っかる人々もいますから、この傾向はこれからもっと進む可能性が高いでしょう。

皆さん、お買い物に行けばあらゆる物の値上がりを、実感されていると思います。電気代やガス代も上がり、飲食店がたくさん廃業しておられます、資材が高騰して建築業界もたいへん厳しい状況です。仕事や生活に大きな影響が及び、これから日本はどうなってしまうのかと、不安をかかえておられる方が大勢いらっしゃいます。

※イメージ

さて、お釈迦さまの誕生を祝う花まつりに、何故このようなお話をと疑問に思われたかも知れませんが、これには理由があります。そして今の世の中だからこそ、この佛心大祭の儀式と、冒頭に歌われた日本の名曲が、皆さまの今後の人生に大きな力を与えると宣言して、お話を始めさせて頂こうと思います。

・・やなせたかし作詞、いずみたく作曲の“手のひらを太陽に”。この歌詞には3つの生きものが登場します。私も福厳寺の境内で、幼いころからよく見て育った生きもの達です。

土をちょっとほじくれば出てくるミミズ。彼らは手足のない下等な生き物ではありません。彼らの祖先は、もともと手や足を持っていたと言われますが、戦略として削り落して土の中に潜ったのだそうです。地上は激しい弱肉強食なので、そこから少しずらした世界を選んだのが、ミミズの歴史です。

オケラ。彼らはコオロギの仲間ですが、手にブルドーザーのような土かきを持ち、やはり激しい地上戦を逃れ、地中に潜りました。

境内の池にもたくさん住んでいるアメンボ、彼らはじつに不思議な生き物だと思いませんか。地上は天敵にあふれ、しかし水中でもたくさんの命の取り合いがある。そこで地上でも水中でもない、あの微妙な水の上で生きて行くことにしたのです。

皆さん、私は彼らの生き方にこそ、これからの日本人が取るべき戦略のヒントが秘められていると思っています。

例えばほんの少し、自分の仕事に他の人がやっていない工夫を加えたり、同じような商品やサービスでも、他にはない思いやりを加えたりしてみるのです。また世の中を見渡せば機械化が進み、他人と関わるのはわずらわしいという風潮もあるなか、じつは人との触れ合いを求めている人達が、いっぱいいます。

大きくなくても良いのです。小さな創意工夫が積み重なることによって、文化は作られて行きます。そして近江商人が大切にした“三方よし”(売り手よし、買い手よし、世間よし)の精神で、思いやりの心を育てて行きましょう。そのようにして私たちは先祖代々、この小さな島国で生き伸びて来ました。

日本人は人の顔色を伺いすぎている?立派なものではないですか。人の顔色を伺えない人達が、世界に行くと大勢います。でも私たちは、気を遣いすぎて胃が痛くなるくらい、気を遣っている・・と思っているだけの人も、いるかも知れませんが(笑)そのような民族なのです。

しかし、その繊細さを「私はこんなに傷つきやすい」と守ってもらうだけでなく、みんなも傷つきやすいと知り、どうか他人への思いやりにも使って行って下さい。

それから皆さん、今いちど“手のひらを太陽に”の歌詞を思い出しましょう。どうか“命”に目を見開いて下さい。そして本当に命を慈しみたいと思ったら、スマートフォンを下ろしてください。

いまこの瞬間、あなたは命を感じられていますか。ちょっと耳を澄ませてみましょう・・向こうで何かが鳴いています、あれは鳥の声です。いま「耳を澄ませてください」と言った途端に、皆さんにも聞こえたのではないでしょうか。

そう、命を慈しむことは目だけでは出来ません。私たちは目に見えるものも、見えないものも、そこにある命はスマートフォンを眺めていたら、気がつかないのです。

お寺や神社に行くと、森があります。ぜひ参拝に行ったら友達とおしゃべりをせずに、自分の目や耳や肌の感覚、全身全霊を研ぎ澄ませて、命を感じてみて下さい。そこには確実に息づいている命があります。

そこに気がついたら、これは何の花だろう、何の生き物だろうと感じてみてください。あらゆる命を慈しんでいるうちに、素晴らしい工夫で厳しい環境を生きている、人間以外の知恵者たちにいっぱい出会うことができます。

そういうことを感じられる人々が、世界に誇る日本の文化を作ってきました。そして経営者も思いやりの心をもって、お客さんにウソをつかず誠実な物づくりを続けて、とてつもない力を発揮してきました。

かつて日本も沢山の危機を経験してきましたが、いま世界でも驚かれるような長寿な会社がいくつも、100年も200年も続いて来たのです。そこには仏の教えがありました。自分だけでなく隣の人、そのまた隣の人達も大事にする慈悲心。そうした仏教の背景も、日本人を育んできたのです。

それとも皆さん、今はやりの〝誰よりも早くお金を稼いで、他人を蹴落とすゲーム〟に乗っかりますか。古来より日本人が大切にしてきた考えと、あなたはどちらを選び、子ども達に伝えて行きますか。株やお金やブランド品、それらももちろん貴重な物です、しかし本当の宝物とは何でしょうか。さて皆さん、お釈迦様はあらゆる命の幸せを願われた方です。すべての境界線を越えて、色の白い人も黒い人も、髪の毛の黒い人も白い人も・・金色の人も茶髪の人も。背の高い人も低い人も。そして人間だけではなく、すべての生命に対しても。

まずはこのゴールデンウイークを皮切りに、ぜひ皆さんも自分の周りから思いやりを広げて行きませんか。誰かが恥ずかしい思いをしていたら、あえて見ないようにしましょう。SNSで誰かが叩かれていても、乗っからないようにしましょう。大愚和尚が失敗したら、目をつぶりましょう。・・最後のは冗談です。

とにかく皆さん、いつもは親子喧嘩や夫婦喧嘩があったとしても、まず今日1日は無しですよ。花まつりでは穏やかに過ごしてください。そしてご自分を大切にすることも大事ですが、隣の人達も大切に思い、少しずつ慈悲心を広げて行きましょう。

すべての命が幸せであれ。本日はようこそお参りくださいました。

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2段構えのサプライズ

「思いやりを広げる」「小さな創意工夫」。法話で語られたこのメッセージですが、その場の皆さんはそれを、すぐ実際の形として目にすることになりました。

気づけば本堂の前には箱いっぱいのお菓子を抱えた、運営スタッフが並んでいます。そして後方では、会場の飾りと思われていたゾウの軽トラックの荷台が昇降、その上にもスタッフの姿がありました。

そうして、とつぜん始まった〝お菓子まき〟は「幸せのおすそわけ」を意味する、東海地方の風習です。スピーカーからは軽快なBGMが流れ、たくさんのお菓子が空中に舞うと、あちこちで歓声があがります。

さらに、このサプライズにはもう一段階の仕掛けが秘められていました。いくつかのお菓子には「当たりシール」が貼られており、それを運よく手にした方は、全員の前で景品が渡されました。

それも1等の3万円旅行券を始め、折りたたみ自転車(※自宅へ郵送)やコーヒーメーカーなど、その中身も驚くものばかり。発表のたびに会場はどよめき、最後の最後まで笑顔の絶えない花まつりとなりました。

~法話会・参加者のお声 (匿名希望・男性)~

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いつも私は車の運転をしながら、佛心宗の動画配信を聞いているのですが、このたび大愚和尚のお話を、ぜひ生で聞いてみたいと思い立ち、東京から足を運びました。

私は今、犯罪を起こした人々の矯正施設で、職員として働いています。収容されている人たちは、傾向として境界知能(※IQが知的障害と正常知能の、境界域にあると言われる人)の方も多く、社会生活になじめないケースも少なくありません。

ときには職員に対して感情を爆発させることもあり・・このようなことを考えてははならないと承知はしているのですが、正直なところ「この人は社会にいないほうが、良いのではないか」と思ってしまうこともあります。それだけに「すべての命が尊い」というお話は、深く胸に刺さりました。

ただ、すぐに自身の心が一変して、それを実践することは簡単ではないようにも思えます。しかし、ぜひ心の中には留めておき、そして東京の現場に戻ったときに、これから向き合って行きたいと思います。ありがとうございました。

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編集後記

花まつり取材の翌々日、愛知県のお隣りの滋賀県で、何の偶然か“アメンボのように水の上を歩く”ことに、チャレンジする機会がありました。

忍者の里で有名な甲賀市には、水上を移動する“水ぐも”という器具の記録があり、それを再現した道具の体験でした。ところがその扱いは非常に難しく、少しでも気を抜くと沈むため、補助ロープへ必死にしがみつきながら、小さなアメンボたちのすごさを肌身に感じました。

同時に「もしこれをヒントに、水上をスイスイ歩ける道具が開発できたら、どうなるだろう」という想像が浮かびました。夢物語ではありますが、もし実現すれば世界中で多くの人々の“移動”を変え、生活が一変する可能性もあります。

法話で語られたように、私たちが豊かになるためのヒントは、やはり自然や生き物の中に、秘められているのかも知れません。

物価高を嘆きつづけるだけでなく、マネーゲームにまっ向勝負を挑むのでもなく、仏教が説く知恵の力こそ大切に生きたいと、この花祭りを体験したからこそ、そのように感じました。

取材:原田ゆきひろ 柴崎彩夏

ABOUT ME
原田ゆきひろ
寺町新聞の執筆・取材を担当。Yahoo!ニュース歴史・文化ライターとしての顔も合わせ持つ。小学生の秘密基地から南米のアマゾン川まで、どこへでも探訪。そこにある興味や発見、人の想い。それらを分かりやすい表現で、書き綴るのがモットー。趣味は環境音や、世界中の音楽データを集めて聴くこと。鬼滅の刃とドラゴンボールZが大好き。 ※写真は歴史衣装・体験中の筆者
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