寺町ニュース

【三代忌①】500年前の和尚様から令和の私たちへ

ときは室町時代。将軍の世継ぎをめぐり、応仁の乱が勃発しました。日本中の有力大名が、東軍と西軍に分かれ京都で衝突。

この戦争は10年経っても終わらず、同時に地方を治める領主までもが、互いの領土や権力争いを始めました。

やがて下克上や一揆も起こり、謀略や武力こそがモノを言う世の中へ。世に言う、戦国時代の始まりでした。

そうした混迷の只中、1476年。尾張の国に、現在の小牧市の一帯を治める、西尾道永(にしお・どうえい)という武将がいました。

彼は、名増と名高い“盛禅洞奭(せいぜん・とうせき)和尚”を招き、居城にほど近い土地を寄進し、お寺を建立。


民衆も大名も。いったい何を信じ、どう生きて行けばよいのか?

当時の誰もが不安を抱き、その救いを仏教に求めたことは、想像に難くありません。

こうして誕生したのが、福厳寺です。

505回目の三代忌

令和5年3月8日。初代住職「盛禅和尚様」ご命日にあたるこの日。

福厳寺では報恩感謝の意を捧げる『三代忌(さんだいき)』505回目の法要が、執り行われました。

佛心大祭やあきば大祭のように、広く公表している行事ではありませんが、この日は全国各地からいらっしゃった、十数名も参加されました。

カーン、カーン・・。

儀式の始まりを告げる鐘が鳴り響くと、本堂は厳かな雰囲気に。木魚や太鼓の音とともに、昔ことばで唱えられる報恩感謝。

黄金に彩られた祭壇の向こうに、 盛禅和尚様がいらっしゃるように感じられます。僧侶以外の参加者も、お経や五体投地の礼拝を行い、心を合わせました。

今ここに居るということ

儀式の後には、大愚和尚より法話を頂きました。

そのお話は、佛心宗の枠を超え、日本中の・・それよりもっと広く、世界中の人々とも共有したい内容でした。

以下に抜粋させて頂きましたので、ぜひ最後までお読み頂けましたら、幸いです。

皆さま、左手を出して下さい。

皆さま、右手を出して下さい。

利き手の人差し指で『恩』という文字を、手のひらに書いてみて下さい。

『恩』は原因の“因”“心”と書きます。

この一字には、わたしたち人間の、この地球に生きるほかの動物たちと違う、とても大事なものが込められています。

『恩』をもつ人と『恩』をもたない人とでは、人生の豊かさが大きく変わります。

確実に変わります。

さて本日、皆さまには福厳寺のご開山、盛禅和尚様の法要のため、お集まり頂きました。

今をさかのぼること、なんと505年前。その方の事を未だに覚えていて、その法要を行っている。

皆さまも私も、ここにいる誰も、盛禅和尚様を覚えているかといえば、覚えていない。

でも皆さんは今、盛禅和尚様に『恩』があるはずです。

これは、どういうことでしょうか?

皆さんは500年前の、ご自身のご先祖も、まったく覚えてはいないはずです。

ですが、祖先を敬って手を合わせることがある。これが人間の想像力です。

覚えてはいないけれど、血のつながりがあるから、手を合わせる。これを“血縁”と言います。

そして皆さんは私を通して仏法に触れ、今ここにいます。教えの上での繋がりを“仏縁”あるいは“法縁”と言います。

しかし盛禅和尚様のことなんて、何も知らない。当然ですね。

そこで私の役割が出てきます。

私が歴史をひも解き「こういう方だった」と。その物語を、皆さんにお話することが大事なんです。

505年前、ぐうぜんとぐうぜんが重なって、盛禅和尚様がここにお寺を開かれなかったら。私は住職をしていないし、皆さんと出会っていません。

私の師匠はたまたま福厳寺の、末寺の和尚さんの子どもでした。

それが、たまたま東京の駒澤大学に行き、そこにたまたま、神奈川県の牧場の娘が通っていて、2人が出会って、私が生まれました。

それから師匠は福厳寺の住職になりましたが、私はこのお寺から絶対に出て行きたいと、思っていました。

そして各地を回って、結局は戻って来て、皆さんと出会っている。

途方もないぐうぜんとぐうぜんが重なって、今がある。これを何というのでしょうか?

私たち日本人が持っている、世界でも極めて珍しい言葉、そのひと言で、それを表現することが出来るんです。

≫【三代忌②】人生の豊かさを左右する2つの大切な日本語

ABOUT ME
原田ゆきひろ
寺町新聞の執筆・取材を担当。Yahoo!ニュース歴史・文化ライターとしての顔も合わせ持つ。小学生の秘密基地から南米のアマゾン川まで、どこへでも探訪。そこにある興味や発見、人の想い。それらを分かりやすい表現で、書き綴るのがモットー。趣味は環境音や、世界中の音楽データを集めて聴くこと。鬼滅の刃とドラゴンボールZが大好き。 ※写真は歴史衣装・体験中の筆者
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