▶︎2025年5月、大愚和尚のワールドツアーが北米で再び開催されました。今回の記事では、カリフォルニア州サンフランシスコで行われたイベントの様子と、そこで生まれた新たなご縁、そして深い学びの一端をご紹介したいと思います。
日本とアメリカ、仏教とキリスト教の垣根を越えて
サンフランシスコ郊外の、El Cerrito(エルセリート)。今年5月、日系人が多く住むこの町の、シカモア組合教会(Sycamore Congregational Church)で、サンフランシスコ大愚道場が開催されました。
ここは1904年、日本人留学生によって創立された、歴史あるプロテスタント教会です。第二次世界大戦中に起きた、日系人の強制収容という苦難を乗り越え、現在も日米の文化をつなぐ場所として活動。いまではキリスト教にとどまらず、仏教的価値観や日本文化にも寛容な、開かれたコミュニティとして親しまれています。
「日本とアメリカの架け橋になりたいと思っています。日本の文化を大切にしながら、この地にいる日本人や日系人がともに助け合っていける、そういうコミュニティが続いていくことを願っています」と語るのは、教会の伝道師・智子さん。「だからこそ、大愚先生の寺町構想にはとても共感しましたし、このご縁を心からうれしく思っています」。
大愚道場は、ちょうど戦没将兵を追悼するメモリアルデー連休の最終日に開催。家族との時間が重なるなかで、多くの方々が集い会場は熱気に包まれました。なかにはアメリカでの参加が3回以上という方もいて、和やかな交流が見られました。

「感情」とは流れであり、動きである
今回の大愚道場で取り上げられたテーマのひとつが「感情」でした。
Emotionという言葉の語源は「e(外へ)」+「motion(動き)」。すなわち、感情とは外からの刺激によって生まれる心の動き。五感を通じて入ってきた情報が思考を生み、やがて感情となって表れる。そのプロセスを理解することで、感情に飲み込まれるのではなく、距離を取って眺められるようになるのです。
これこそ、仏教の四念住(しねんじゅう)の実践。
① 体(体念住)
② 感覚(受念住)
③ 心(心念住)
④ 真理(法念住)
への気づきを深める入り口ともいえるでしょう。
「自分自身の取扱説明書を手に入れたような感覚でした」と語る参加者もいました。

抵抗せず、流れに乗るということ
午後のワークでは、まさに感情の扱い方を“体で学ぶ”時間がありました。
たとえば、問題解決をテーマにした実演では、最初にふたりの参加者が、それぞれ異なる方向に大愚和尚を引っ張ることで、互いの主張がぶつかり合う状況が再現されました。
しかし次の場面では、和尚が参加者の動きに逆らわず“流れに乗る”ように応じた結果、力を使わずに調和が生まれ、物事が円滑に運ばれる様子が印象的に示されました。

このワークは、まさに柔道や合気道といった日本の武道の精神に通じるもの。相手に抵抗せず、その力を受け入れ、自らの動きに変換する。力で勝とうとするのではなく、調和のなかにこそ真の強さがある。
それは、仏教の「諸行無常」や「縁起」の教えにも重なる感覚であり、深い納得と学びが参加者のなかに残ったようです。

さらに、別のワークでは、両腕を上げるだけで、仏教でいう「正しさ」を体感できるワークを行いました。片腕の向きを変えるだけで腕の長さが変わる実演では、あちらこちらから歓声が起こりました。

見方を変えれば、世界は変わる
サンノゼからお越しの会社を経営されている堀江さんは、終了後のインタビューでこう語ってくださいました。
「従業員の悪いところばかりに目がいって悩んでいました。でも、あのワークを通して、見方を変えてみると、彼らの長所が見えてきたんです」
まさに、感情や思考の“クセ”に気づくことが、日常のストレスや葛藤の解消につながる。そのことを、参加者それぞれが実感する時間となりました。
「不安定がデフォルト」〜そのひとことに救われる
翌日、大愚和尚は、JCCNC北加日本商工会議所主催のセミナーに登壇されました。
このセミナーは、経営者でもある大愚和尚と、アメリカでビジネスを行う日本人との接点が持てればと、国際経営マンダラ部の妙瑩(みょうけい)さんが、JCCNC北加日本商工会議所に掛け合って、大愚和尚の参加を実現したものです。
経済や社会の変化が激しい混沌とした時代とどう向き合っていけばいいのか。日米で活躍するビジネスリーダーたちが、対話しました。

大愚和尚以外の登壇者は以下の方々:
- 石井正純氏(AZCA, Inc. Managing Partner)
マッキンゼーやIBMを経て、日米のスタートアップ支援や人材育成に携わる実力者 - 松倉大士氏(Philosophy Technologies Co-Founder & Co-CEO)
月面探査事業やIPOを経て、現在は問いの力で組織変革を支援 - モデレーター:幸村友美氏(Creatry Inc. CEO)
日米での人材・組織開発の経験を活かし、2023年にCREATRYを設立
セミナーの中で、多くの共感を集めた大愚和尚のコメントを紹介します。
「私たちは“今の時代は不安定だ”といいます。しかし、どの時代も不安定だった。不安定こそが“デフォルト”なのです。だからこそ、そのなかで何ができるかを見つめる。それが仏教の教えなのです」
会場に来られた方々は、深くうなずきながらその言葉に耳を傾けていました。

心にすっと風が吹くような時間
今回のサンフランシスコ道場とセミナーには年齢層も幅広く、遠方からはるばる参加された方々などが集い、どちらも熱気に包まれた時間となりました。
YouTubeの「一問一答」チャンネルから和尚の言葉に触れ、実際に足を運んだという方も多く、
「“不安定がデフォルト”という言葉がとても印象的でした」
という声も聞かれました。
心の混乱が続く現代にあって、私たちはとかく心を見失いがちです。そんななか、柔らかな視点で、物事の本質に触れる機会。それが、今回の大愚道場とセミナーに共通する空気だったように思います。
さて、次回はどこに“風”が吹くのでしょうか?
実はこの記事が投稿されたいま、秋のワールドツアーの真っ只中。そう、2025年秋、大愚和尚のワールドツアー第二章がスタートしています。
再び、ベイエリアでの道場開催も決定している今回のツアー。詳細は、下記のリンクよりご確認ください。
心がすっと、爽やかで穏やかな風に包まれる…。そんな時間から生まれる、新たな気づき。あなたもぜひ体験してはいかがでしょう。

(感想、メッセージは下のコメント欄から、よろしくお願いします。by寺町新聞編集室)
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