2024年、1月1日。福厳寺山内では、ちょうど朝から連続していた新年の参者の波が落ち着き、皆でお茶を飲んでいたときでした。建物全体の明らかな揺れを感じて、誰もが「地震」を確信しました。
「震源地はどこ!」急いで検索すると、それは石川県能登半島の先端でした。震源地からおよそ360キロ離れた福厳寺でもあれほどの揺れを感じるのだから、相当な規模に違いないと調べてみると、マグニチュード7.6、震度7の強い揺れであったことが分かりました。
29年前の阪神・淡路大震災の規模がマグニチュード7.3でしたから、それを上回る規模の地震です。実は石川県能登地方では、令和2年(2020年)12月から地震活動が継続しています。
2019年に私が能登を訪れた際には、訪問先のご住職が「魚料理と海」が自慢の浜辺の宿をお世話してくださいました。ありがたく料理を堪能して布団に入った矢先のこと、地震とともに津波警報がけたたましく鳴り始めたのです。飛び起きて荷物をまとめ、車に飛び乗って高台に非難しました。
幸い被害を出すほどの津波ではありませんでしたが、再び宿に戻って安眠できるとは思えず、夜通し高速道路を走って愛知県に戻ったことを思い出します。
不安定な人生をしたたかに生きるために
日本に住む私たちにとって、地震は他人ごとではありません。東海3県などの太平洋沿岸では「南海トラフ巨大地震」が、今後40年のうちに90%の確率で発生するだろうとも言われています。しかも過去の例を調べてみると、南海トラフ地震発生の50年くらい前に、中部地方や近畿地方で、マグニチュード8.0を記録した濃尾地震に代表されるような大きな地震が起こっています。
新年早々から穏やかならぬ挨拶の書き出しですが、「自分だけは大丈夫」という楽観や強がり、「怖いから考えたくない」という現実逃避は、いずれも危険です。
正しく恐れ、過去の事例や先人の智慧に学んで、有事に備えておく。
その上で明るく、堂々と生きる。
この、災難を想定して生きる姿勢はそのまま、不安定な人生を「強かに生きる力」となります。人生は苦難の連続であり、明日はどうなるか分かりません。だからこそ、「今日何を成すのか」「今をどう生きるのか」が重要です。
脳と体を正しく活かす
しかしながら「今」は「未来」からやってきます。過去の積み重ねから「今」が来るのではありません。
私たち人間には発達した脳があります。脳は常に思考し、過去や未来を行き来しています。
脳の正しい使い方は、過去を反省したり、未来を想像したり、客観的に思考したりすることです。過去を悔やみ続けたり、未来を憂いたり、欲や怒りで迷妄するのは、望ましい脳の使い方ではありません。
一方、私たちの体は「今、ここ」にしか生きられません。体の正しい使い方は、苦痛を避けて快適に動くことです。ストレスや苦痛を我慢し続けたり、良質な栄養や必要な休息を取らなかったりするのは、体の望ましい使い方ではありません。
脳と体を正しく活かすことで、日々の生活に喜びが生まれ、成長と成功がもたらされるのです。
未来は誰にも予測できません。想像通りの未来になるかという保証もありません。それでも「未来に何を想像するのか」は、人生を確実に左右します。「想像した未来に向けて何をどう行うのか」が、人生を大きく左右するのです。
令和6年のテーマ
明るい未来を想像し、そこから逆算して「今、ここ」に成すべきことを成す。それが「今を精一杯に生きる」ということです。そこで令和6年は、年頭に次のようなテーマを掲げました。
「行思必成」(ぎょうしひっせい:考え、行ったことは、必ず結実する)という意味です。
悪しき思考と行動は、悪しき実を結びます。善き思考と行動は、善き実を結びます。考えずに行動するのもダメ。考えているだけでもダメ。正しく考え、正しく行動する。
1:何を考えるのか。
①「成したいこと、成すべきこと」を考え、明らかにする。
②「どうしたらそれが成せるか」を考え、明らかにする。
やり方が分からなければ、めんどくさがらずに調べたり、その道のマスターに教わったりすること。
2:どう行動するのか。
①とにかくやってみる
②やってみた結果が望ましいものであれば、そのまま続ける。
やってみた結果が望ましいものでなければ、出来る人に指導を仰いだり、反省して間違いを正す。
その繰り返しが、人生の成功を左右します。
正しい努力とは
この世の道理はシンプルです。正しい努力は、正しい果を結び。間違った努力は、間違った果を結ぶ。結果の善し悪しは、果物や野菜の栽培と同じ、味わいで分かります。
「美味しい」か「まずい」か。その努力の結果は、明るく、楽しく、喜ばしい状態を、あなたとあなたの周りにもたらしているか。その努力の結果は、暗く、苦しく、悲しみや後悔の状態を、あなたとあなたの周りにもたらしていないか。
世の中には、「自分ではどうしようもないこと」と、「自分でどうにかせにゃならん」ことがあります。
「どうしようもないこと」を憂い続けるのではなく、「どうにかせにゃならんこと」を、明るく工夫し続けるのが、人生です。
本年もまた、焦らず、腐らず、コツコツと丁寧に精進を積み重ねていく所存です。
合掌 大愚 元勝