大愚道場

【大愚道場2024・東京】~変えるべきは心から?身体から?~

2024年12月21日(土)。この年ラストとなる大愚道場が、東京の『有明セントラルタワー ホール&カンファレンス』にて開催され、400名を超える参加者が集いました。

これまで大愚道場では開催後に「次は大切な人と一緒に学びたい」「終わった後、感想を話し合える相手がいれば」といった希望が、多く寄せられてきました。

それを受けて今回は、大切な方を1名連れて2名で参加できる特別な大愚道場として開催となりました。

また現在、基本的に初級と中級に分かれている大愚道場ですが、スペシャルバージョンにおいては、初級中級問わず、『他者とのコミュニケーション』のテーマにも、踏み込んだ興味深い内容となりました。

4階の大きな会場は、日本最大の展示場として有名な東京ビックサイトを目の前に臨み、眼下にはビルの間を通る、モノレールの線路が伸びています。

大きなガラス窓からは、さながら近未来都市のような風景が広がりますが、大愚道場の内容は命や自然に深く根差した、学びと気づきの1日となりました。

心をなぐさめるよりも先に、やるべきこと

大愚道場における稽古は、私たちが苦しみを手放し、より幸せに生きるために、お釈迦様が説いた仏教の基本『四諦八正道』に基づきます。

そこへ、これまで大愚和尚が取り組んできた、武道や体に関する研究、また一問一答など、人生相談を通じて得た経験や感覚。そして身体感覚に乏しい現代人に必要となる『正体(しょうたい)』を加えた『佛心九正道』を学び実践します。

折に触れて仏教用語も登場しますが、その内容は現代の言葉と感覚に合わせ、誰もが分かる内容としてわかりやすく伝えられます。

冒頭に、大愚和尚は語りました。

「私たち人間の感覚器官は本来、危険や痛みを避け、生存に必要なものを得るために発達しました。

しかしライオンなど猛獣に襲われることもなくなった現代で人は、自分の感覚器官を、快楽や刺激を求めるために使うようになってしまっています。

大企業がより多くの商品やサービスを売るため、キーワードとしている言葉に『HALT(ハルト)』と呼ばれるものがあります。

それぞれ英単語で、
Hungry(空腹)、Angry(怒り)、Lonely(寂しさ)、Tired(疲労)
の頭文字を取っており、人はこのタイミングで最も消費行動に走ると言います。

昔であれば企業にとって、そういう人がどこにいるのか、直ぐには分かりませんでした。しかし現在はスマートフォンに、本人が検索欄へ打ち込んでくれます。

「私は疲れています、お腹が空いています、怒っています、寂しいです。」

それを一時的にでも、紛らわせてくれる商品を宣伝すれば、飛ぶように買って貰える。

しかも脳は疲れるほどに、より強い刺激を求めます。

強いお酒、こってりした食べ物、過激なエンターテイメント。

次第に今までのものでは満足できなくなり、さらなる刺激を求め、そのようにして多くの方に起きているのが、感覚麻痺です。

現代の人にとってまず必要な事は、心をなぐさめることよりも、もっと身体の感覚を開くことなのです」。

身体の感覚を開くワーク

身体の感覚を開くとは、具体的にはどのようなことでしょうか。座学のみならず、実際の体感を伴うワークも、大愚道場の大きな特徴です。

身体の正しい使い方と、正しくない使い方。その2つを壇上で大愚和尚が見せると、会場はどよめきました。そして、その場のすべての参加者も実際に、同じ動きを行います。

また、この日は『正体』に限らず、怒りを抑える感覚をつかむワークなど、テーマは他の八正道にも及びました。

一通りのワークが終了すると、大愚和尚は語ります。

「八正道はみんな“正しい”という文字がついていますよね。何ごとも正しく、正しく・・。何だかお説教のように、かた苦しく感じられる方がいるかも知れません。

しかし、それは違います。お釈迦様の言う正しいとは、力まず自然体であることです。無理なく発せられる言葉や動きは、見ていて美しいものです。

皆さんは、自分の身体の動かし方なんて、とうの昔にわかっていると思っていたかもしれません。ところが多くの場合そうではありません。

そればかりか、どうでしょうか。

私は足が短い、綺麗なモデルと比べて顔の造形が気にくわないと、自分の身体を責め続けるのです。

赤ちゃんのときは違いますが、物心がつくと自分の身体を他と比べて劣っていると、無理にいじめ続けるのです。

現代人の一番大きな問題は、心が病んでいることではなく、自分の身体を大切にしないことです。

健康が大事と言いながら、本当の意味で、体と心を大切にしていないことが問題です」。

真剣勝負の一問即答

『単刀直入』という言葉があります。

これはもともと禅語であり、仏教では本気で相手の懐に飛び込み、思いを伝えることを表します。そして、この日の一問即答は、まさにそれでした。

ある相談者の方が将来、とある方向を目指したいというお話になった際、大愚和尚の返答は「それは、あなたには難しいでしょう」というものでした。

大愚道場は大半が和やかな雰囲気ですが、この時ばかりは会場全体が“固唾を飲んで見守る”、空気感に包まれました。

しかし、人の人生を真剣に考えて話をする時は、どうしても和気あいあいというわけには行きません。

大愚和尚も「厳しい事をいいますが」と前置きされていましたが、これは質問者の可能性を否定するものではなく、ひとつの目標にとらわれず、さまざまな選択肢、さまざまな可能性も視野に入れて考えて欲しい、という真意から、投げかけられた言葉でした。

また相談者の話に、よくよく耳を傾けた上で発せられた本気のアドバイスでもあり、遠慮してオブラートに包んだり、「嫌われたくない」という恐れを抱いては、口に出来ない内容でした。

そして大愚和尚も「実は、かつて私も同じように悩んでいました」と、ご自身の過去に照らして話し、だからこそ向き合って欲しかったと語りました。

最終的な選択はご本人の判断になりますが、大愚和尚はどの道を選んだとしても「あなたを応援しています」と言い、質問者の方もその真意を汲み取られたように見えました。

いまいちど、ご自身の可能性と相対するきっかけを、この一問即答から持ち帰られたように見受けられました。

大愚道場に臨んで

この日は参加者や運営スタッフの数名に、当日のリアルな感触も含めた、さまざまなお話を伺うことができました。ここでは、その一部を抜粋してご紹介したいと思います。

【専学和光(せんがく・わこう)さん】群馬県在住

私の「専学和光(せんがくわこう)」という名は授戒会に参加して、大愚和尚から授かりました。

あれこれ思いを移すのではなく、1つのことに“専念”して“学び”、その知識や技術で周りと“調和”しながら、困っている人を“光”で照らせるような人になってほしい、と名付けて頂きました。

これまでも大愚道場には参加して来ましたが、やはりリアルの場でしか感じられない、心の奥に響くものを感じます。

大愚和尚のお話はYouTubeでも聴けるのですが、肉声から発せられる響きや、ひとつひとつの言葉に宿っている、精神性というのでしょうか。

実際にお会いできるオフラインの場だからこそ、頭だけでなく身体で感じられる部分が、沢山ありました。

そして今までの大愚道場も含めていちばん実感しているのは、心と身体は本当に連動しており、それが本当に自分を変えるということです。

私は以前、福厳寺で開催された“動画クリエイター道場”に参加しました。その合宿の際、テンプルステイと同じように、ご飯を食べる時にも茶碗の持ち方など、色々な作法が決まっていました。

それを日常でも行うようにしたら、不思議なもので少ない食事量でも満足できるようになったのです。その上、一日を通して身体もちゃんと動きます。

それまでは何も考えず、食欲のままに食べていたので、周りからも「変わったね」と言われるほどに、違いを感じて驚いています。

また他にも、よく大愚和尚がおっしゃる“愛語”を心がけるようにしたら、周囲との関係も含めて、日常でもさまざまな変化がありました。

これからも、こうした気づきや学びを、ぜひ普段の生活にも取り入れて行きたいと思います。

【萩原(はぎわら)純子さん】神奈川県在住 

私はこれまで大愚道場のサポートスタッフとして、物販を2回ほどやらせて頂いたのですが、今日は初めて司会のお役目をやらせて頂きました。

じつは当初、司会をやることに前のめりであったわけでなく、事前の「どんな事ができますか」というアンケートで、何でもやってみようという気持ちで、チェックを入れた1つでした。

そうしましたら本当にお声がけを頂いて、自分から出来ると言った手前、もうやるしかないと、思い切ってお引き受けしました。

実際に司会をさせて頂くと、会場の全体が見える立ち位置で、これまでとはまったく違う視点になりました。そして道場が始まると参加者の皆さんが、熱心に耳を傾けている光景が印象的でした。

身を乗り出すようにしている方もいらっしゃって、受け身ではなく自分から取りに行っている姿勢を、ひしひしと感じました。

また大愚和尚の立ち振る舞いや、お声も間近で拝見、拝聴して、そのすべての内容が本当に印象的でした。一問即答では和尚様も質問者様も本当に遠慮なしで、確信に迫るようなズドンと来るようなご意見の数々に、何て貴重なお話が交わされているのだろうと感じました。

その内容も、私も他人の事とは思えず自分事のようにして聴いていたのですが、きっと質問者様の人生を左右する、大切なやりとりであったと思います。

個人的にはサポートメンバーを続ける中で、スタッフの皆さんにも顔や名前を覚えて頂ける様になり、それも嬉しく感じています。これからもサポートメンバー、あるいは参加者としてかも知れませんが、どのような形でもぜひ大愚道場に、参加し続けたいです。

編集後記

過去最大規模で行われた、スペシャルバージョンの大愚道場は満席となりました。そして初参加の方が多くを占めたのも、大きな特徴でした。大愚道場が、これほど多くの方に求められるのは、何故でしょうか。

当記事ではお載せしませんでしたが、当日は“人生の選択肢を広める”テーマとなった際、「イノベーション」に関するお話もありました。このイノベーションという言葉は、ゼロから何かを創造するのではなく、もともと存在するもの同士を組み合わせ、新たな価値を創造することとお聞きしました。

筆者はこの大愚道場に、仏教のイノベーションが起きているように感じています。仏教自体は2500年もの昔から存在していますが、そこに大愚和尚という存在が組み合わさることで、イノベーションとなっているように感じられます。

この大愚道場というイノベーションは、現代人にこそ、必要とされるものであり、この先も多くの方の人生の道標となって行くのではないかと感じます。

ABOUT ME
原田ゆきひろ
寺町新聞の執筆・取材を担当。Yahoo!ニュース歴史・文化ライターとしての顔も合わせ持つ。小学生の秘密基地から南米のアマゾン川まで、どこへでも探訪。そこにある興味や発見、人の想い。それらを分かりやすい表現で、書き綴るのがモットー。趣味は環境音や、世界中の音楽データを集めて聴くこと。鬼滅の刃とドラゴンボールZが大好き。 ※写真は歴史衣装・体験中の筆者
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